最新記事

中国

中共中央「マリオ」パクリと即刻削除の怪を読み解く――中国政府高官を取材

2019年2月4日(月)14時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

Q:まず、そうすべきですよ。

A:いや、しかし一方で不思議なのは、なぜ任天堂が中国政府に対する抗議声明を出さないのかということだ。むしろ、アメリカのように、日本の企業も中国政府を提訴すればいいと思っているくらいだ。そうすれば、中国政府も何らかの反応を示すしかなくなる。

Q:提訴するとか、抗議声明を出してほしいと思っているのですか?

A:してほしいというより、そうすべきではないかと思うのだが、任天堂はそうしていない。

Q:日本のメディアでも「任天堂は個別の案件に関してはコメントを控える」と言っていると報道しています。

A:そこなのだが......、ここからは想像だから責任のあることは言えないが、思うに、任天堂と政法委系列の関係部門は、何らかの交渉をしたのではないかと思う。政法委は経済的利益を求める組織ではないが、任天堂は中国でもビジネスを展開しているわけだから、それなりの今後のビジネス上の利害を考えたのではないかと......。

Q:しかし、これまでにも「クレヨンしんちゃん」とか「ウルトラマン」とか、中国は色々と著作権侵害をしていますよね。でも、裁判には多くの年月がかかり、しかも中国の対応はひどすぎる。

A:でも、彼らは堂々と抗議し、提訴している。その方が中国も反省するし、少しは進歩していくかもしれない。

拿来(ナーライ/だらい)主義――中国のパクリ文化

Q:中国がそういう精神面で進歩するでしょうか?中国には魯迅(ろじん)以来の拿来主義があるので、パクリに対して、少しも罪の意識がないのではないですか?

(注)拿来主義とは、2014年12月9日付のコラム「中国のパクリ文化はどこから?――日本アニメ大好き人間を育てたのも海賊版」に書いたように、1934年6月7日に魯迅が雑誌『中華日報・動向』に「拿来主義」という文章を載せたことから来ている。「拿来」は中国語では「ナーライ」、日本語では「だらい」と読み、「どこかから持ってくる」という意味だ。英語で表現すると"copinism"(コピー主義)とか"by borrowed method"(借りた方法で)などとなる。魯迅は、「立ち遅れた中国の文化や技術を前進させるには、すでに存在する海外の優れた文化や技術を取り入れた方が早い」と述べている。

A:その通りだ。中国はまだその認識が立ち遅れている。著作権というか、知的財産権に対する認識が甘すぎる。それが改善されなければ、真に発展したとは言えない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米加州の2035年ガソリン車廃止計画、下院が環境当

ワールド

国連、資金難で大規模改革を検討 効率化へ機関統合な

ワールド

2回目の関税交渉「具体的に議論」、次回は5月中旬以

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、米国の株高とハイテク好決
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 10
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中