最新記事

インドネシア

「世界一早く水没する都市ジャカルタ」BBC報道にインドネシアが動じない理由とは?

2018年8月14日(火)18時45分
大塚智彦(PanAsiaNews)

大雨で冠水した道路で遊ぶジャカルタの子どもたち。こういった経験が水没に動じない国民性を育てる? Beawiharta Beawiharta - REUTERS

<バリ島やロンボク島で多数の犠牲者が出る地震に見舞われたインドネシア。今度は首都ジャカルタが将来水没の危機という報道が出たが、現地の反応は?>

英BBC放送が8月13日、世界で最も早く水没する都市としてインドネシアの首都ジャカルタをとりあげて、2050年までに水没する危機に瀕していると報道した。ジャカルタ市内あちこちでいまだに続く個人や企業による違法な地下水の汲み上げが地盤沈下の主な一因で、このまま放置してなんら対策を講じない場合にはジャカルタのほぼ全域が水没する事態になる、と警告を発している。

ところがBBCの報道を受けたインドネシア側は特に驚くでも反発するでもなくただ静観しているのが現状だ。というのもこれまで何度もジャカルタ水没の危機は繰り返し伝えられ、対応策が急務であることを政府もジャカルタ特別州当局、市民も理解、納得しているのがその理由とみられる。とはいえ誰もが「そんなに心配しなくても大丈夫だろう」と楽観視して問題意識が希薄なことも事実で、専門家や学者は「手遅れになる」と危機感を訴えている。

BBCの報道ではバンドン工科大学で地盤沈下を専門に研究しているヘリ・アンドレス氏が、北ジャカルタではこの10年間で2.5メートル地盤が沈下しているという指摘を伝えた。これは世界の海岸部都市の平均の倍以上のスピードで、すでにジャカルタの半分はゼロメートル地帯、つまり海水面以下にまで沈下しているという。「笑いごとではない。我々の予測では2050年までにジャカルタの95%が水没することになりかねない」と官民が事態を深刻にとらえて早急な対策を講じることが不可欠と強調している。

海水面上昇と地下水利用で水没の危機深刻化

ジャカルタの水没には実は2つの要素が密接に関連している。地下水を違法汲み上げした結果としての地盤沈下と、地球温暖化による世界的な海水面の上昇である。国家気象変動機関のラフマット・ウィトエラール氏はすでに2013年に海水面の上昇が続けばジャカルタ北部のアンチョール地区は2030年までに水没する可能性があると指摘している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル/円軟調、関税導入巡る不透明感で

ビジネス

米国、輸出制限リストに70団体を追加 中国・イラン

ビジネス

米国株式市場=続伸、米関税巡る柔軟姿勢に期待 経済

ワールド

ザポロジエ原発「ロシアの施設」、他国への管理移転不
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取締役会はマスクCEOを辞めさせろ」
  • 4
    「トランプが変えた世界」を30年前に描いていた...あ…
  • 5
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 6
    トランプ批判で入国拒否も?...米空港で広がる「スマ…
  • 7
    「悪循環」中国の飲食店に大倒産時代が到来...デフレ…
  • 8
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 9
    老化を遅らせる食事法...細胞を大掃除する「断続的フ…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中