中国、地方都市に「特区ブーム」 中央政府が恐れる債務拡大の懸念も
希望と疑惑
忠県の住民は、ゲーム関連施設が収入を押し上げ、雇用を生むことを期待していると語る。地元政府は、まだ特別地区の申請を出していないが、手続きを進めているという。
忠県文化委員会のYu Hui氏は、特区計画はまだ初期段階にあるため、具体的な投資収益率などの目標は立てていないと語る。eスポーツ産業を選んだのは、大きな将来性を見込んだからだという。
急拡大する中国のゲーム産業は「必ずやわれわれの経済によい効果をもたらしてくれる」と、Yu氏は言った。
12月にオープンする忠県のスタジアムは、将来的にはゲーム競技会による賃料収入やチケット収入をもたらすと、Yu氏は話す。忠県は、政府が後援する中規模競技会「China Mobile E-sports Games」の決勝戦を今後5年間ホストする権利を得たという。
中国では、主要なeスポーツのイベントは上海などの大都市で開かれることが多い。最寄の主要都市重慶からの主な交通手段が所要時間3時間のバス便しかない忠県がファンを呼び込むのは、より困難だろう。だがYi氏は、スタジアムがオープンすれば、訪問者のためにシャトルバスを運行すると話す。
忠県は、ゲーム特区により、最低でも36億元の新たなビジネスや投資、観光客を呼び込む効果を見込んでいる。
太湖のほとりにある江蘇州宜興市丁蜀鎮は、すでに特区として政府の認可を受け、焼き物の「茶器の街」としての歴史を活用している。また、同時に小規模な航空産業を発展させるという、両輪作戦を取っている。
産業パークを設立した同市ではすでに、太湖用の小型水上機や航空機器を製造する会社が稼働している。市当局はさらに航空関連ビジネスを招致し、空港を建設したい考えだ。
とはいえ、最も期待をかけているのは、丁蜀鎮の焼き物産業だ。
宜興市の広報担当者は、航空産業パークは、焼き物特別地区とは別の独立した計画だと述べた上で、丁蜀鎮の経済発展をこのパークがより豊かなものにするだろうと述べた。
地元住民は、特区の指定がどう焼き物産業を後押ししてくれるのか不明だと話し、競争の激化を心配する。
「いまのところ、丁蜀鎮が特区になって変わったことは何もない」と、焼き物を売っていたZhangさんは話した。
(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)
[忠県/宜興、中国 8日 ロイター]
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