最新記事

プリピクテ国際写真賞・東京巡回展

持続可能な社会を考える国際写真賞「プリピクテ」

2017年11月22日(水)16時40分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

<西野壮平>
ジオラマ・マップ・ロンドン 2010
シリーズ名:ジオラマ・マップ 2010-2016  © Sohei Nishino, Prix Pictet 2017

pictet04.jpg

数ヶ月都市を歩き、見晴らしのよい場所を探して、数百本ものフィルムに景観を記録する。撮影した全てののべ数万枚の写真を手焼きして切り取った写真1枚1枚を、自らの記憶と共にコラージュして、都市の地図を再構築していく。単なる鳥瞰図ではない。あえて、スケールを変えたり、場所もしばしば反復することで、私たちが持つ時間と場所に対する記憶の曖昧さを示す。遠くからは抽象画のようにも見え、近くに寄って細部を見ると、都市を構成する生命とみなぎるエネルギーが織りなす小宇宙が広がっている

<トーマス・ルフ>
ma.r.s.08_II 2012
シリーズ名:ma.r.s, 2010-2013 ©Thomas Ruff, Prix Pictet 2017

pictet05.jpg

作品の素材として、NASAの探査船が調査、研究のために撮影した衛星写真を使用している。火星の表層が極限までのクローズアップで映し出された写真は、地球に送信するデータの重さに制限があるために、白黒で記録されているが、その写真にデジタル加工で、一般に火星の光景として認識されている色を加えたり、異質な印象を創り出すために意図的に色を変えたりすることによって、宇宙に真の色などないことを喚起させる。探査船のカメラが切り取る、火星の「風景写真」の可能性を探る作品

<川内倫子>
無題 2012
シリーズ名:あめつち 2012

pictet07.jpg

冬枯れの土地に火を放ち、草原を再生する阿蘇山の野焼きは、毎年早春に行われてきた行事で、1300年以上の歴史がある。「あめつち」とは「天地」を意味する。展示される作品は、複数の写真から構成されたシリーズの一部で、焼ける大地と夜空の写真を並列させることで、天と地、光と闇、生と死などの二元性が表現される。現実世界と夢や精神世界とを同化させながら、ものごとの起源と人間とのつながりを見つめ、最終的には記憶や時間を超越した目には見えない共有空間、宇宙的広がりへとつながっていく

他の展示作家:
セルゲイ・ポノマリョフ
ムネム・ワシフ
パヴェル・ヴォルベルグ
マイケル・ウルフ
サスキア・グローンバーグ
ベアテ・グーチョウ

プリピクテ国際写真賞『Prix Pictet SPACE(宇宙・空間)』東京巡回展

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年2月以来の低水準

ビジネス

アングル:「豪華装備」競う中国EVメーカー、西側と

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 5

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 8

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 9

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中