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米大統領

当選から1年、トランプの成績表

2017年11月21日(火)18時00分
ニューズウィーク日本版編集部

実現できなかった公約

★オバマケアを撤廃する
トランプはバラク・オバマ前大統領が遺したオバマケア(医療保険制度改革法)を「大災害」と酷評し、今年1月の大統領就任初日に見直しに向けた大統領令に署名した。だが本当の関門はその後。議会共和党の代替法案作成が難航するなか、トランプは「これほど複雑な問題だとは誰にも分からなかった」と語った。結局、共和党内から造反者が出て代替法案は上院で否決され、今後の道筋は見えないままだ。

★メキシコ国境に壁を建設
不法移民対策としてメキシコとの国境に壁を建設し、その費用をメキシコに負担させるという勇ましい公約は支持者を熱狂させた。だが就任直後に壁の建設を命じる大統領令に署名した後も、事態は動かず。民主党との予算折衝は行き詰まり、4月には国土安全保障省のジョン・ケリー長官(当時)も「大陸を横断する形で壁、あるいは物理的な障壁を建設する可能性は低い」と認めた。

★クリントンを訴追する
選挙期間中、トランプの支持者たちは対立候補ヒラリー・クリントンの私用メール疑惑をやり玉に挙げ、「彼女を収監しろ!」とシュプレヒコールを上げた。トランプも昨年10月のテレビ討論会で「私が勝利したら、あなたの状況を調べる特別検察官を指名するよう司法長官に指示する」と発言。だが選挙後は「アメリカはクリントンに『恩義』がある」とトーンダウンし、訴追の話は立ち消えに。

★イスラム教徒の入国禁止
トランプは就任早々、イスラム圏7カ国の出身者のアメリカ入国を一時停止する大統領令に署名した。だが全米各地で抗議デモが相次いだ上、複数の連邦裁判所に執行停止を命じられて計画は頓挫。ただし、その後署名した新たな大統領令の一部は執行が認められ、イスラム圏6カ国からの移民は米国内に住む人物・団体との「真正の関係」を証明することを求められるように。

★あらゆる人に減税を
トランプは個人の所得税率と連邦法人税率をそろって引き下げる大型減税を掲げ、「あらゆる人々、特に中間層が減税の恩恵を受けられるだろう」と豪語していた。実際、9月には約30年ぶりとなる抜本的な税制改革案を発表したが、恩恵を享受できるのはごく一部の富裕層に限られるとみられ、批判の声が上がっている。

★無駄遣いと休暇を減らす
選挙期間中のトランプはオバマがゴルフばかりしていると批判し、「自分が当選したらホワイトハウスをめったに留守にしない」と語っていた。だが就任以降、彼がゴルフ場で過ごした日数は既に70日以上。家族による「無駄遣い」も目に付く。妻メラニアと息子バロンは6月までニューヨークで暮らしており、ワシントンとの往復の旅費や警備費に巨費が投じられた。

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[2017年11月21日号掲載]

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