最新記事

中国外交

習近平、苦々しい思い:米韓合同軍事演習

2017年8月25日(金)17時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

番組では、どんなに参加人数を軽減するなどしても、開戦まであともう一歩といった臨戦態勢を取り、米軍のハリス太平洋司令部司令官、ハイテン戦略司令部司令官、グリーブス弾道ミサイル防御局局長およびブルックス在韓米軍司令官兼米韓連合司令官の4大巨頭を「実戦場」に集結させるという前代未聞のデモンストレーションをやるに至っては、これまでで最大規模だということさえできると、解説者は怒りを隠さない。

特に米空軍のU-2偵察機を非難

日本ではこのたびの米韓合同軍事演習でU-2偵察機が使われたことを報道した情報は(筆者の知る限り)あまり見たことがなく、唯一産経新聞が、ロイターの写真キャプションで報道しているくらいだ。そこには明確に「21日、韓国・ソウル近郊の平沢にある米軍基地上空を飛ぶ米空軍の偵察機U-2(ロイター)」と書いてある。

ところが中国では、ほとんどがこのU-2偵察機(スパイ機)に話題が集中しているくらい、盛んに報道されている。たとえば、「U-2偵察機、朝鮮半島上空に出現。米軍は開戦の準備をしているのか?」など、数多く見られる。

この偵察機は、韓国に配備されているTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)に付属しているXバンド・レーダーより遥かに高い「偵察能力」を有しており、中国大陸における軍事配備をも偵察できる。そのため中国は何よりもU-2偵察機の使用を非難しているのである。

結果、習近平は米韓合同軍事演習を奨励した日米「2+2」外交防衛会議を苦々しく思い、特に日本の関与を実に不快に思っているので、日本への何らかのいやがらせ的軍事行動があるかもしれない。日中国交正常化45周年記念行事も一応行うのは行うが、快く思っているわけではないことを、頭に入れておきたい。

endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国人民銀、1年物MLF金利据え置き 差し引き供給

ビジネス

今年のジャクソンホール、金融政策伝達がテーマ=カン

ワールド

トランプ氏不倫口止め裁判で元腹心証言、弁護団は信頼

ビジネス

インフレなお高水準、まだやることある=カンザスシテ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 4

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中