最新記事

インタビュー

Readyforのプロジェクト実行者の6割は本職をほかに持つ人

2017年4月28日(金)21時31分
WORKSIGHT

ソーシャルメディアの普及でコラボレーションしやすい時代になった

マギーズのような実例を目の当たりにすると、クラウドファンディングは人の働き方も変えていく力を持っていると感じます。個人が会社の中で培ってきた属人的な部分を、社会のさまざまな課題やイノベーションへの想いにマッチングさせていく。それはこれからの仕事の1つのあり方でしょう。

私が大学院時代に開発した人物検索サイト「あのひと検索 スパイシー」*** は、まさにそんなふうに人をつなげることを目的としたシステムでした。今はフェイスブックやリンクトインのようなソーシャルメディアが普及して、個人の経歴や友人関係がより可視化されるようになりました。それだけ人と人がつながりやすく、コラボレーションもしやすい時代になったといえます。マギーズのようなプロジェクトが、近い将来は当たり前になるかもしれません。

特に若い人の場合、大義があるところに能力やお金を提供したいという思いを持つ人も多いですね。それは社会に貢献したいというより、新しい時代の自己実現だと思いますが、ともあれその流れがソーシャルなプロジェクトをどんどん起こすのではないかとも思うんです。東京オリンピックが終わるころにまた新しい価値観が模索されるかもしれませんが、この先5年くらいはそういう方向に変化していくのではないかと。

それを許容するには企業側のマインドも変わっていく必要があるでしょう。ITを導入して仕事の効率が上がってワーカーの時間が空いたとき、経営者としては会社のためになることをやってほしいと思うけれども、でも厳密に管理してしまうと新しいことは起こらないでしょう。もっと有機的に、立場に関係なくコラボレーションしていく方が面白いし、そういう社会の中でこそReadyforのようなサービスはもっと浸透していくのかなと思います。

企業トップの決断と組織の構造改革が求められる

もう1つ、クラウドファンディングと企業の関係についていえば、新規事業の可能性や潜在的な市場規模を推し量るマーケティングツールとしてReadyforに興味を持ってくださる方もいるのですが、そこでは企業の覚悟が試されることもご理解いただきたいと思っています。

若い世代の人はクラウドファンディングも活用して新しいサービスや製品を生み出したいと意気込むものの、大きな会社だとそれを許してもらえない空気があるとも聞きます。従来的な社内の認可プロセスを経ていない商品が外部に公開されることを怖がる人もいる。その気持ちはよくわかります。クラウドファンディングで多くの支援を獲得できればいいけれども、場合によってはあまり良くない評価を得ることもあるでしょう。

アイデア段階のものや開発中のものであってもカジュアルにオープンにしていくことができるか。ネガティブな評価も含めて受け止めることができるか。クラウドファンディングをテストマーケティングに使う場合、企業にはトップの決断と組織の構造改革が求められます。

とはいえ、面白い分野ではあると思いますね。大企業で仕事をしている人は多いし、そういう方々のノウハウ、知識、ネットワークが、何かやりたいという思いでつながって、それによってさらにアクションが加速することもあるはず。私たちもそのつなぎ役を果たすべく、人がつながる場所を作りたい。そういうことが起こりやすい空気を社会に作っていくことで、みんながハッピーになれたらいいですよね。

【参考記事】5割の社員がオフィスにこない、働き方満足度No.1企業

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中