「世界一の祝祭」リオのカルナヴァルは熾烈なリーグ戦だった
サンバやカルナヴァルがただの音楽文化、ただの祭りでないことがわかっていただけただろうか。例えば東日本大震災においても、日本各地にあるエスコーラ・ヂ・サンバは被災地支援に尽力した。筆者に限らず、多くのエスコーラが炊き出しを行い、サンバの打楽器をたくさん抱えて被災地入りして合奏しては、老若男女を問わず、理屈と我を忘れて合奏を楽しむ時を共にした。
なかでも埼玉のエスコーラ"アレグリア"の活動には目を見張るものがある。2011年より現在までに20回以上、東北の被災各地に出向いては、瓦礫の撤去、炊き出し、物資提供、そしてサンバで元気づけるなど、活動を継続してきた(熊本地震の被災地でも)。また、筆者はサンバのメソッドによるワークショップも、学校や学術機関、野外音楽フェスで行っている。
今年は疑惑のジャッジで名門エスコーラが優勝
さて、最後に今年のリオのカルナヴァル、メインスタジアムのリーグについて少しレポートしておこう。
3大名門エスコーラのひとつ、Portela(ポルテーラ)の33年ぶりとなる優勝が話題となった。ただし、ここで詳細は省くが疑惑のジャッジであり、現地メディアでは今も、採点者や採点表原本まで取り沙汰されて判定に対する係争が報じられており、裁判にまで発展していて話題の渦中だ。事実上のチャンピオンは抗議をしている準優勝のMocidade Independente(モシダーヂ・インデペンデンチ)だろう。
また、筆者も打楽器奏者として参加した3大名門のもう1チーム、インペーリオ・セハーノが2部で優勝し、8年ぶりに1部に復帰したことも話題に。昨年はもうひとつの名門Mangueira(マンゲイラ)が優勝しており、伝統と実績のある古豪の復活がこのところ注目点となっている。
山車の故障と運転ミスによる事故で多数の重軽傷者を出しただけでなく、厳正に運営されているカルナヴァルを中断させ(事実上1時間以上の試合中断状態に)、レギュレーションのひとつである規定パレード時間を大幅に超過した2エスコーラ、Paraíso do Tuiuti(パライーゾ・ド・トゥイウチ)とUnidos da Tijuca(ウニドス・ダ・チジューカ)が降格を免れた。これはポルテーラの優勝とは比べものにならないほどにリーグの裁定に対する大きな不信を呼んでいる。
そんなこともありながら、カルナヴァルはともかく終了した。リーグはすでに2018年シーズンへと移り、チームの再編、契約更改や移籍が活発となるストーブリーグに突入している。アートディレクター、打楽器隊リーダー、歌手などの引き抜き合戦がリオや世界中のサンバ愛好家たちの間で注目と話題の的だ。
その一方、世界のサンバ愛好家たちは自らの準備も進めているはずだ。本場リオの100年の伝統と歴史を敬愛し、理解する外国人の参加はますます増加の一途だ。2018年のリオのカルナヴァルまですでに1年を切っているが、チャンスがあれば参加してみたいという人はいないだろうか。
世界中の民族と歴史が流れ込んだ多人種混成社会だからこそ成し得る、世界最大の祝祭を実体験し、その心意気を会得する日本人が増えることを願っている。
ケイタブラジル(KTa☆brasil)
東京生まれの日本人音楽家。著名なJ-POPシンガーから世界的なアーティストまで制作・共演の実績多数。1997年よりブラジルで活動。リオ市観光局公式プレゼンター。本場リオのサンバの殿堂初(G.R.E.S. Império Serrano)の外国人公式認定打楽器指導者。リオの名門クラブチームC.R.Vasco da Gamaスタジアム殿堂刻名会員。
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