最新記事

サイエンス

原因不明の「乳幼児の突然死」に画期的研究、死因は...

2016年11月17日(木)19時43分
ルーシー・クラークビリングズ

JulieanneBirch-iStock.

<これまで原因不明だった乳幼児突然死症候群(SIDS)について、オーストラリアの研究者らが「死因はタンパク質の減少」のようだと発表。今後は出生時に危険性の有無を判別できるようになるかもしれない>

 赤ちゃんが睡眠中に突然亡くなる乳幼児突然死症候群(SIDS)を研究した生物学者らが、死因は脳内のタンパク質の減少だと示唆する画期的な研究結果を発表した。

 オーストラリアのシドニーにあるロイヤル・アレクサンドラ小児病院の研究グループによれば、もしその研究結果が正しければ、出生時にSIDSの危険性の有無をスクリーニング検査で判別できるようになるという。

 欧米でしばしば「コットデス(突然死)」と呼ばれるSIDSについて、死因に関する医学的根拠が提示されるのは初めて。これまでSIDSの原因は分かっておらず、窒息など睡眠時の事故とは異なるものの、「うつぶせ寝は避ける」「できるだけ母乳で育てる」といった注意が喚起されるだけだった。

 突然強い眠気に襲われるナルコレプシー(過眠症の一種)のなかで多い、筋肉が一時的に弛緩する症状は、オレキシンを作る神経細胞が破壊され、脳内のオレキシンが不足することで引き起こされる。オレキシン(別名ヒポクレチン)とは、覚醒や睡眠、食欲を制御する神経ペプチドで、タンパク質の一種だ。

 研究者らによると、SIDSで死亡した乳児についてもナルコレプシーの時と同様、オレキシンの欠乏が認められたという。

「赤ちゃんが睡眠中に亡くなる事例があることから、睡眠に関連した問題があることは把握していたが、死因は分かっていなかった。われわれの研究は、この脳内タンパク質が重要なカギを握っているらしいことを突き止めた」と、同病院で睡眠部門を率いるリタ・マチャーラニ医師は英デイリー・テレグラフ紙に語った。

「もし新生児の(オレキシンの)正常値を定めることができれば、異常値に該当した子供たちがSIDSや睡眠時無呼吸症候群に陥る危険性を予見できるようになるだろう」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が

ビジネス

NY外為市場=ドル対ユーロで軟調、円は参院選が重し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中