最新記事

2016米大統領選

トランプの新政策が物語る「大衆の味方」の大嘘

2016年10月1日(土)10時50分
ジョーダン・ワイスマン

Mike Blake-REUTERS

<大規模減税や規制緩和の導入といったトランプの経済政策から透けて見えるのは、富裕層や主流層に擦り寄りたいという本音>(写真はトランプとヒラリーの模型飛行機)

 9月末に、会員制の「ニューヨーク経済クラブ」で経済政策について講演した米大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ。グローバリズムの弊害や製造業の雇用喪失など聞き慣れたテーマについて一通り話した後、リッチなビジネスマンたちに向けて、野心的な政策を提示した。

 いわく、自分が政権を取ったら、「4%の成長率」を目標にする。「私の経済顧問たちは黙っていてほしいそうだが、私はもっといい結果を出せると思っている」とも、彼は付け加えた。

 4%の成長率という目標に聞き覚えがある人もいるだろう。今回の大統領選でそれを口にしたのはトランプが初めてではない。共和党予備選を途中撤退したジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事は、4%成長を公約に掲げていた。トランプはそれをこき下ろしていたのに、今になって同じことを言い出すとは。間抜けな男の顔に砂を蹴りかけて、恋人を奪うのに等しい行為だ。

 党内の献金者たちに擦り寄っているのはその点だけではない。トランプは選挙戦でポピュリスト(大衆主義者)を装っているが、実際は富裕層や共和党のエスタブリッシュメント(主流派)が最も望む政策を出してきている。つまり選挙資金をたっぷり寄付してくれるような金持ちが得をする、大規模減税と規制緩和だ。

【参考記事】トランプ、キューバ禁輸違反が発覚=カジノ建設を検討

金融規制改革法も廃止

 昨年発表した経済政策では10年間で10兆ドル規模の減税がうたわれた。最も大きな恩恵を受けるのは富裕層で、政策としてはまるであり得ない、パロディーのようなものだった。今回の講演で見せた青写真では少し規模を縮小したが、それでもまともとは言えない4兆4000億ドルの減税を宣言。これもほとんどが富裕層の利益になる。

 トランプは、所得税減税(話題になった育児費用の控除を含む)は、中流世帯の税負担を軽くすると主張。一方で、「500万ドル稼ぐような人々の税負担は実質的に変わらない」とした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏への航空機贈呈、カタールが懸念一蹴

ワールド

援助トラック100台がガザ入りへ、国連がイスラエル

ビジネス

日銀が国債買い入れで意見聴取、一部メガバンクが減額

ビジネス

中国CATL、香港上場初日は16%高 景気懸念でも
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:関税の歴史学
特集:関税の歴史学
2025年5月27日号(5/20発売)

アメリカ史が語る「関税と恐慌」の連鎖反応。歴史の教訓にトランプと世界が学ぶとき

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    【クイズ】世界で1番「太陽光発電」を導入している国は?
  • 4
    実は別種だった...ユカタンで見つかった「新種ワニ」…
  • 5
    中ロが触手を伸ばす米領アリューシャン列島で「次の…
  • 6
    【裏切りの結婚式前夜】ハワイにひとりで飛んだ花嫁.…
  • 7
    「運動音痴の夫」を笑う面白動画のはずが...映像内に…
  • 8
    日本人女性の「更年期症状」が軽いのはなぜか?...専…
  • 9
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」…
  • 10
    飛行機内の客に「マナーを守れ!」と動画まで撮影し…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」する映像が拡散
  • 4
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 5
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 6
    中ロが触手を伸ばす米領アリューシャン列島で「次の…
  • 7
    「運動音痴の夫」を笑う面白動画のはずが...映像内に…
  • 8
    トランプ「薬価引き下げ」大統領令でも、なぜか製薬…
  • 9
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 10
    コストコが「あの商品」に販売制限...消費者が殺到し…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
  • 5
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 6
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 8
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 9
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 10
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中