最新記事

2016米大統領選

トランプの新政策が物語る「大衆の味方」の大嘘

2016年10月1日(土)10時50分
ジョーダン・ワイスマン

 だがこれは、彼が掲げる大幅な法人税減税(株主に利益をもたらす)を無視した発言だ。実際、ニューヨーク経済クラブで話を聞いていた、明らかに中流層でない人々は、トランプが法人税の最高税率を35%から15%に引き下げると言うと喜びの声を上げた。トランプはさらに、億万長者にしか関係のない相続税の廃止も公約にしている。

 新たな経済政策でどのように利益が分配されるかは、シンクタンクなどの評価を待ったほうがいい。それでも、金持ち優遇であることだけははっきりしている。保守系シンクタンク、税財団のアラン・コールによれば、歳入減の半分は法人税と相続税の減税によるものになりそうだ。

【参考記事】「トランプ政権下」の日米関係をどう考えるか?

 トランプは講演で、幅広い産業の規制緩和についても時間を割いた。彼はオバマ政権の温暖化ガス排出規制を否定しているし、10年に成立した金融規制改革法(ドッド・フランク法)を廃止する意向も示している。ロビイストには夢のような話だ。

 トランプと共和党主流派の意見が合わない経済課題もある。貿易だ。彼はここでもアメリカの労働者を守ると騒いでいるが、実際の提案はそれほど強烈なものではない。中国製品への関税強化も貿易協定に違反した国への訴訟強化も、かつての大統領候補が言ったり、オバマ政権がやったりしてきたものだ。

 結局のところトランプは、上位1%の富裕層を助ける政策を「大衆のための政策」と偽っている。ニューヨーク経済クラブで講演を聞いた金融関係者たちが、気に入らないわけがない。

© 2016, Slate

[2016年9月27日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米英首脳、両国間の投資拡大を歓迎 「特別な関係」の

ワールド

トランプ氏、パレスチナ国家承認巡り「英と見解相違」

ワールド

訂正-米政権、政治暴力やヘイトスピーチ規制の大統領

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 8
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中