最新記事

法からのぞく日本社会

もしも自動運転車が事故を起こしたら......こんなにも複雑!

2016年9月20日(火)15時40分
長嶺超輝(ライター)

Kim Kyung-Hoon-REUTERS

<自動運転レベル2の車両はすでに市販されており、完全自動運転となるレベル4も今や夢物語ではない。しかし交通事故となると、責任を負うべきは自動車メーカーか、AI開発会社か、ITS管理会社か、それともカーナビ地図業者か......。来るべき自動運転時代への準備は、まだまだ整っていない> (写真:中国の自動車メーカー長安汽車も自動運転車開発レースに参戦している。テストドライブの様子、4月)

 人間がハンドルを握る代わりに、AI(人工知能)がクルマを目的地まで安全に運ぶ「自動運転」が、今や夢物語ではなくなっている。今後、高齢化や独居がますます進む社会において、自動運転車の需要は確実に高まっていくだろう。

 自動運転は1~4までのレベルが設定されており、レベル2まではすでに日本でも市販されている。たとえば道路渋滞のときに、前方の車の動きを検知して停止や発進をする機能などが、自動運転レベル2に該当する。

●自動運転レベル0:「アクセル(加速)・ハンドル(操舵)・ブレーキ(制動)」すべての操作をドライバーの責任で行う。

●自動運転レベル1:「アクセル・ハンドル・ブレーキ」のいずれかを自動で行う。

●自動運転レベル2:「アクセル・ハンドル・ブレーキ」のうち複数を同時に自動で行う。

●自動運転レベル3:「アクセル・ハンドル・ブレーキ」のすべてを自動で行うが、システムが要請したときはドライバーが運転を対応しなければならないので、運転免許を持つ者が必ず1人乗車し、待機している必要がある。

●自動運転レベル4:「アクセル・ハンドル・ブレーキ」のうち複数を同時に自動で行い、ドライバーは全く関わらない。

 一般にレベル2以上が「自動運転車」と定義され、レベル4が「完全自動運転車」といわれる。

 1970年の大阪万博で、人類初の自動運転モノレールを実用化させ、世界を驚かせた日本だが、自動運転車の開発では後れを取っている。

 ドイツのアウディ社が来年、世界初のレベル3量産車を市場へ投入するとみられている。

 自動運転バスは、レベル4に向けて、日本やフランス、ドイツがすでに動き出している。アメリカのフォード社は2021年を目標に、カーシェアサービス向けに完全自動運転車の量産を目指すという(日経ビジネス2016年9月5日号)。

 2030年頃には、日本国内でレベル3が1050万台、レベル4が56万台まで普及すると予測されている(日本経済新聞電子版2016年6月15日)。

【参考記事】死亡事故のテスラは自動運転車ではなかった
【参考記事】歩行者とドライバー、自動運転車はどちらを守る?

 では、レベル4の完全自動運転車が交通事故を起こしたらどうなるのだろうか。ドライバーがいないので、誰が事故の法的責任を取るのかが問題となる。

道路交通法、自動車損害賠償補償法、PL法

 道路交通法2条1項18号の中で、運転者は「車両等の運転をする者」と定義されている。また、自動車損害賠償保障法3条は、「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる」として、運行供用者の責任を定めている。たとえば、レンタカーを運転中に事故を起こしたときは、運転者だけでなくレンタカー会社も責任を負うことになるのは、この運行供用者責任が適用される場面だからだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任し国連大使に指

ビジネス

米マスターカード、1─3月期増収確保 トランプ関税

ワールド

イラン産石油購入者に「二次的制裁」、トランプ氏が警

ワールド

トランプ氏、2日に26年度予算公表=報道
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中