最新記事

人道問題

北朝鮮がアフリカに犯罪者数百人を「輸出」疑惑

2016年5月19日(木)16時30分
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト) ※デイリーNKジャパンより転載

 当該施設で北朝鮮人が働かされていることは「公然の秘密」だと同サイトは伝える。記事を引用して報じたコンゴ民主共和国(旧ザイール)の「ル・ポタンシエル」紙は、同様の施設はサンパカとリャバにも存在していると付け加えた。また、北朝鮮企業は赤道ギニアで、富裕層向けの住宅、兵営、競技場の建設工事を請け負っている。

 赤道ギニアは、産油国で財政的には非常に豊かなものの、富が国民に還元されず貧しいままだ。独裁体制が敷かれており、腐敗認識指数では世界最下位を記録するなど、エリトリアと並んで「アフリカの北朝鮮」と称されている。

 北朝鮮とも長年友好関係を築いている。李スヨン元外相も、昨年、アフリカ歴訪の初の訪問地として同国を選んだほどだ。

 赤道ギニアには、北朝鮮企業の進出も進んでいる。「朝鮮コンピュータセンター(KCC)」は、数年前から首都マラボに進出。2015年には、大統領の官邸、私邸、公用車などの映像監視セキュリティシステムの導入契約を結んだ。北朝鮮に近い情報筋によると、契約額は30億ドル(約3253億円)だ。

 この問題については、フランス国営ラジオ(RFI)やラジオ・フリー・アジア(RFA)も、ル・ポタンシエル紙を引用する形で北朝鮮の「犯罪者輸出」について報じていることから、国際社会で問題として取り上げられるのは時間の問題だ。

(参考記事:Santiago de Baney un municipio lleno de misterio y presos norte-coreanos(スペイン語のサイト))

[筆者]
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ――中朝国境滞在記』(新潮社)、『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)、『北朝鮮ポップスの世界』(共著、花伝社)がある。

※当記事は「デイリーNKジャパン」からの転載記事です。
dailynklogo150.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

郵船、発行済み株式の7.6%・1000億円を上限に

ビジネス

午前の日経平均は反落500円超安、円安進み為替介入

ワールド

カボベルデ、アフリカ初の平和サミット出席表明 ゼレ

ビジネス

過度な変動への対応、介入原資が制約とは認識してない
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 5

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 6

    デモを強制排除した米名門コロンビア大学の無分別...…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    中国軍機がオーストラリア軍ヘリを妨害 豪国防相「…

  • 10

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中