最新記事

タックスヘイブン

世界の企業資金2210億ドルが低税率国へと流入

ここ数年の資金流入は富裕国よりも途上国の方が増える

2016年5月4日(水)19時59分

5月3日、国連貿易開発会議は企業が昨年2210億ドルの資金を税率が低い国に移したと指摘した。写真はグーグルの節税対策を批判する小型飛行船。テルアビブで4月3日撮影。(2016年 ロイター/Baz Ratner)

 国連貿易開発会議(UNCTAD)は3日、企業が2015年に2210億ドルの資金を税率が低い国に移したとする報告書を発表した。主な移転先はルクセンブルクとオランダだった。タックス・ヘイブン(租税回避地)とされる英領のバージン諸島とケイマン諸島へは720億ドルが流入した。

 ただ、ルクセンブルクとオランダは、企業の租税回避を取り締まる欧州連合(EU)の新規制の適用を開始。昨年第4・四半期には、両国から何十億ドルもの資金が流出した。

 バージン諸島とケイマン諸島への資金流入はこれまでの平均とほぼ同じだったが、資金の出元はここ数年、富裕国よりも途上国の方が目立つという。

 2010年から14年の上位4カ国・地域は、香港と米国、ロシア、中国だった。

 中米パナマの法律事務所から流出した文書が、世界の富裕層や権力者による租税回避地を使った資産隠しを明らかにして以来、英国のキャメロン首相は、ここ数カ月にわたって租税回避を取り締まるよう求める圧力にさらされている。

 UNCTADの報告書は、企業が節税のために国境を越えて資金を移転させていることは、政策当局者にとって引き続き「主要な懸案事項」だとした。26の途上国から企業をサンプル抽出して分析したところ、14年には中国よりもバミューダでより多くの利益を計上していたとしている。

 報告書は、こうした仕組みに利用される「特別目的事業体(SPE)」について、進出先の経済とのつながりはあまりない子会社で、資産や負債を保有していたり資金を調達したりすると記載。

 昨年第3・四半期にオランダのSPEに流れ込んだ資金は1480億ドルにのぼり、07年以来の高水準だった。ルクセンブルクと英国からの投資が多かった。ただその後、資金の流れは急速に反転した。

 米国で資金を調達しているファンドに関連したルクセンブルクへの資金流入は、昨年年初以降の3四半期に急増し、14年の同じ時期の3倍となった。ただ第4・四半期は1150億ドルの純流出だった。

 報告書は「ルクセンブルクとオランダでSPEの資金の流れに強い相互関係があることは、こうした事業体が両国で濃く複雑なつながりをもっていることを示す。資金の必要度や納税プランに応じて資金が頻繁に行き来している」としている。

[ジュネーブ 3日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ベトナム国会議長、「違反行為」で辞任 国家主席解任

ビジネス

ANAHD、今期18%の営業減益予想 売上高は過去

ワールド

中国主席「中米はパートナーであるべき」、米国務長官

ビジネス

中国、自動車下取りに補助金 需要喚起へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 8

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中