最新記事

朝鮮半島

中国訪韓、対北朝鮮制裁に賛同の用意あり──THAADの配備は牽制

2016年2月17日(水)17時51分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 さらに韓国にTHAADを配備するということは、事実上、中国をその射程内に入れることになる。したがって、これは対北朝鮮のための防衛ではなく、対中国を射程に置いているというのが中国の見解だ。

 11日にミュンヘンで中韓外相が会談し、同じ見解を王毅外相は述べているのに、ここで敢えて、2年8か月ぶりの中韓外交部門ハイレベル戦略対話開催を口実に張業遂を訪韓させたのは、来週からTHAAD配備に関する本格的な交渉が米韓間で始まるからもあろうが、もっと別の微妙な理由もあるのではないだろうか。

THAADの韓国配備は中朝を軍事的に近づける――中国が警戒

 THAADを韓国に配備すれば、中韓関係は必ず悪化する。

 それを最高に喜ぶのは誰だろうか?

 日本ではない。北朝鮮だ。

 中韓関係は昨年末の日韓外相会談(慰安婦問題)で最悪になった。それでも中国は中韓関係が悪化することによって、日米や北朝鮮を利することを嫌がっているのだ。だから北朝鮮が事実上の弾道ミサイルを発射してからは、日韓外相会談への不満(恨み?)など言っていられず、2月5日に習近平国家主席は朴槿恵大統領と電話会談をした。

 だというのに、韓国がTHAAD配備を受け容れたりすれば、習近平政権になってから、あんなにまでして築いてきた中韓蜜月は、完全に終止符を打つ。

 それはすなわち、中朝軍事同盟を強化させる方向に動いてしまい、中国にとっては最悪のシナリオだ。

 万一にも北朝鮮がさらに暴走し、アメリカと軍事的衝突を起こした場合には、中国は中朝軍事同盟があるために北朝鮮側に立たなければならない。中国の軍事力が現状でアメリカの軍事力に勝てるはずがない。中国は必ず負ける。となれば中国共産党による一党支配体制は、必ず崩壊するのだ。

 こんなシナリオを、中国が許すはずがない。

韓国内にもTHAAD配備反対派が

 実は韓国内にもTHAAD配備を反対している者がいるし、お金もかかるし、韓国内でだって諸問題があると、中国政府関係者は漏らした。

 中国語だと翻訳しなければならないので、たとえば日本語の画像で見て頂くと、「THAADの韓国配備に反対」というのがある。そこには

――米国の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の在韓米軍配備が取り沙汰される中、市民団体がソウル市内で韓国への配備反対を訴えた。北朝鮮の事実上の長距離弾道ミサイル発射などを受けて、韓国政府は米国とTHAADの 在韓米軍配備について協議することを決めたが、中国は米軍のレーダーが自国軍の監視に利用される恐れがあるなどとして強く反対している=17日、ソウル (聯合ニュース)

 と書いてある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米司法省、ミネソタ州知事らを捜査 移民当局妨害の疑

ビジネス

米FRB副議長、パウエル氏支持を表明 独立性は「経

ビジネス

アングル:自動運転車の開発競争、老舗メーカーとエヌ

ワールド

米、ガザ統治「平和評議会」のメンバー発表 ルビオ氏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 2
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手がベネズエラ投資に慎重な理由
  • 3
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 4
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 5
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 6
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 7
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 8
    イランの大規模デモ弾圧を可能にした中国の監視技術─…
  • 9
    日中関係悪化は日本の経済、企業にどれほどの影響を…
  • 10
    鉛筆やフォークを持てない、1人でトイレにも行けない…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 4
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 5
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 6
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 7
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 8
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 9
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 10
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中