最新記事

軍事

日本がフィリピン軍に練習機の供与検討、南シナ海での中国への防衛力を強化

南シナ海の中国潜水艦を牽制したいフィリピン軍へ、抑止力になる航空機を安倍政権が提供

2015年8月6日(木)16時08分

8月6日、日本がフィリピン軍に対し、訓練用の航空機の供与を検討していることが明らかになった。海上自衛隊の訓練機、撮影日不詳。防衛省提供(2015年 ロイター)

[東京 6日 ロイター] - 日本がフィリピン軍に対し、訓練用の航空機の供与を検討していることが明らかになった。海上の監視活動に使えば、南シナ海で中国と領有権を争うフィリピンの防衛力強化につながるとみている。

他国軍の能力支援に、自衛隊の中古装備を輸出する初のケースとなる。

<レーダーと目視で警戒監視>

日比両政府の関係者によると、検討されているのは、海上自衛隊が操縦士育成に使用している練習機「TC90」。もともと米ビーチクラフト社が開発したビジネス機で、高い軍事能力はない。しかし、日本の関係者は「レーダーを積めば偵察機として使える」と話す。

南シナ海で中国と緊張が続くフィリピンは、海の監視能力を高める装備の供与を日本に求めており、特に対潜哨戒機「P3C」に強い関心を示している。西太平洋に抜けようとする中国の潜水艦をけん制するのが狙いだが、P3Cは収集した情報の解析などに高度な運用能力が必要なことから、扱いの容易なTC90が俎上(そじょう)に乗ってきた。

別の関係者は「レーダーと目で見て写真を撮ってくる、という警戒・監視に使える。潜っている潜水艦は無理だが、水上艦艇なら見ることができる」と言う。

検討はまだ初期段階とみられ、フィリピン国防省の上層部は日本側から正式な提案を受けていない。ガズミン国防相はロイターの取材に対し「(TC90の供与は)承知していない」としている。

フィリピンとの防衛協力を進める日本の防衛省は「TC90、P3Cを含め、わが国とフィリピンとの間における具体的な防衛装備・技術協力の内容は決まっていない」と回答した。

日本は親日のアキノ大統領の任期が終わる来年6月までに、フィリピンとの関係をできるだけ強化したい考え。安倍晋三首相とアキノ大統領は今年6月の首脳会談で、装備輸出を可能にする協定の交渉を開始することで合意した。

中古装備の供与に壁

問題は、国有財産を無償や低価で他国に渡せない財政法の縛りが日本側にあること。政府内では、自衛隊の中古装備の供与が同法の対象外となるような法的な手当てを検討する案や、適正な中古価格で売却する案などが出ている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

維新、連立視野に自民と政策協議へ まとまれば高市氏

ワールド

ゼレンスキー氏、オデーサの新市長任命 前市長は国籍

ワールド

ミャンマー総選挙、全国一律実施は困難=軍政トップ

ビジネス

ispace、公募新株式の発行価格468円
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 2
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 5
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 6
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 7
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 8
    「中国に待ち伏せされた!」レアアース規制にトラン…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 7
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 10
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中