最新記事
核兵器

トランプの核実験再開宣言に震える世界──核戦力を拡大する中国、その狙いはロシアの抑止

BROUGHT TO HEEL

2026年1月10日(土)11時00分
ブレンダン・コール (本誌記者)
中国の陸海空のトライアドを公開した25年9月の軍事パレードには新型ICBM東風5Cも登場 KEVIN FRAYER/GETTY IMAGES

中国の陸海空のトライアドを公開した25年9月の軍事パレードには新型ICBM東風5Cも登場 KEVIN FRAYER/GETTY IMAGES

<ドナルド・トランプ米大統領が核実験再開に言及し、世界に緊張が走った。冷戦終結以降、暗黙の了解として守られてきた核実験モラトリアムが崩れれば、国際秩序は根底から揺らぎかねない。一方で中国は、核兵器の使用に反対する姿勢を崩さないまま、着実に核戦力を拡大している。その動きの裏にあるのは、パートナーでありながら警戒を強めるロシアの核リスクだ>


▼目次
リスクを取りすぎるロシア
開発する動機が米ロと異なる
核実験の再開は近いのか

ドナルド・トランプ米大統領は、2025年11月初めに放映されたCBSニュースの番組でこう言い放った。「ロシアは核実験をやっている。中国もやっている。ただ、それを口にしない」

「アメリカは核実験を再開すべきだと語るトランプ CBSニュース「60ミニッツ」

中国はトランプの発言を否定した。だが中国の核戦力の拡大と核に対する姿勢は、核戦争へ傾くロシアを抑制するブレーキになるかもしれない。

「中国は核をちらつかせる瀬戸際政策を非常に嫌っている。この点は間違いなくロシアを落ち着かせ、抑える効果を持っている」と語るのは、ウクライナの歴史学者で、核軍拡競争の歴史を描いた新刊『核の時代(The Nuclear Age)』を出版したばかりのセルヒー・プロヒーだ。

中国はロシアのウラジーミル・プーチン大統領が仕掛けたウクライナ戦争に対し、公式には中立の立場を取る。だが22年2月24日のロシア軍のウクライナ侵攻以降、中国はロシアの最大の経済パートナーとなり、両国間の貿易は記録的な額に膨らんでいる。中国とロシアは「制限なき」パートナーシップを誇示する。だが中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は、「核のタブー」を破らないことについて固く一線を守っている。一方で習はプーチンに警告を発しているともいわれる。

「中国は今後も自らの核戦力を増強しつつ、他国には核兵器使用を思いとどまらせようとするだろう」と、プロヒーは言う。「核兵器使用は中国の利益にならないからだ」

newsweekjp20260107051653.jpg

セルヒー・プロヒー『核の時代(The Nuclear Age)』(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

在米中国大使館の劉鵬宇(リウ・ポンユィ)報道官は、本誌にこう語った。「中国は国連安保理の常任理事国として、また責任ある核保有国として平和的発展の道を歩み、核の先制不使用の方針を堅持し、自衛的核戦略を追求し、国家の安全に必要な最小限の核戦力を維持している」。さらに劉は、中国は核実験モラトリアム(一時停止)の約束を守り、「包括的核実験禁止条約(CTBT)の権威を保ち、国際的核軍縮・不拡散体制を維持するため、各国と協力する」と付け加えた。

アナリストは戦術核と呼ばれる戦場の核兵器が、ウクライナではロシアに戦略的利点をほとんどもたらさないと指摘してきた。だが22年、核によるロシアの脅しはアメリカに深刻な懸念をもたらした。当時CIA長官だったビル・バーンズは、ロシアの設定したレッドライン(危険な一線)をアメリカが越える「紛れもないリスク」があったと語っている。

「アメリカと西側は、ロシアのはったりにやられた」と、プロヒーは言う。彼は当時の米バイデン政権がプーチンの核の脅しを過大評価し、それをロシアの高官やプロパガンダが増幅させたと考えている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ミネソタ州に兵士1500人派遣も、国防総省が準備命

ワールド

EUとメルコスルがFTAに署名、25年間にわたる交

ワールド

トランプ氏、各国に10億ドル拠出要求 新国際機関構

ワールド

米政権、ベネズエラ内相と接触 マドゥロ氏拘束前から
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向」語る中、途方に暮れる個人旅行者たち
  • 2
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 3
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 4
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 5
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 6
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」…
  • 7
    シャーロット英王女、「カリスマ的な貫禄」を見せつ…
  • 8
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 9
    鉛筆やフォークを持てない、1人でトイレにも行けない…
  • 10
    AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サ…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 6
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 7
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 8
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 9
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 10
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中