最新記事

サッカー

FIFA御用達、5つ星ホテルの実力

国際サッカー連盟御用達の超高級ホテルが見せた宿泊客逮捕時の完璧な気遣い

2015年5月28日(木)15時02分
ポリー・モセンズ

密室も完備 この白亜の壁の向こうでFIFA上層部の密談が行われていたらしい Arnd Wiegmann-Reuters

 もし世界の注目のなかで逮捕されるなら、チューリッヒの5つ星ホテル「ボー・オー・ラック」に勝る場所はない。とくに、長年にわたる巨額の汚職疑惑で逮捕されるような金満容疑者にとっては、これほどふさわしい舞台はないだろう。

 米連邦検察局は、FIFA(国際サッカー連盟)の副会長ら関係者9人を含む14人を、脅迫、通信詐欺、資金洗浄、贈収賄など47の罪で起訴した。世界最大のスポーツ競技団体FIFAの内部では、組織ぐるみの大規模な不正が24年間にわたって続いていた模様だ。

 ボー・オー・ラックはそんなFIFA幹部御用達のホテル。そこへ、米当局の依頼を受けたスイスの捜査当局が踏み込んだ。

 絶大な権限を握るFIFA理事会は、他でもないこのホテルで「密室政治」を行ってきたらしい。スイートルームの宿泊料金は一泊数千ドル。アルプスの山々を望むチューリッヒ湖岸の広大な庭園に面し、数々の賞に輝いた2つのレストランやメンバー制のクラブなどがある。

 とはいえ、このホテルの魅力は何と言っても行き届いたサービスだろう。メイドは1日に2回、客室の清掃を行い、コンシェルジェとリムジンの運転手は24時間態勢で宿泊客のニーズに応じる。

 著名な宿泊客が逮捕されるときのための用意も万端だ。FIFA幹部がパトカーに乗り込むときも、スタッフが糊のきいたまっ白いシーツをカーテンのように広げて報道陣や通行人の好奇の目から守った。

 今回の一斉検挙は異例の早朝に実施されてホテル側を驚かせたが、フロント係は冷静に対応。スイートルームから出たくないとフロントに泣きつく往生際の悪い客にも、「警察の取調べですから」と丁重に言い聞かせた。警察車両に運び込まれる容疑者の荷物も、細かな気遣いをモットーとするメイドたちがスーツケースに詰めた模様だ。

 ここで逮捕された7人の容疑者はいずれも、手錠なしでホテルから連行された。これもボー・オー・ラックの威光のお陰に違いない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏貿易黒字、2月は前月の2倍に拡大 輸出が回

ビジネス

UBS、主要2部門の四半期純金利収入見通し引き上げ

ビジネス

英賃金上昇率の鈍化続く、12─2月は前年比6.0%

ビジネス

日産、EV生産にギガキャスト27年度導入 銅不要モ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無能の専門家」の面々

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 5

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 6

    キャサリン妃は最高のお手本...すでに「完璧なカーテ…

  • 7

    韓国の春に思うこと、セウォル号事故から10年

  • 8

    中国もトルコもUAEも......米経済制裁の効果で世界が…

  • 9

    中国の「過剰生産」よりも「貯蓄志向」のほうが問題.…

  • 10

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 3

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入、強烈な爆発で「木端微塵」に...ウクライナが映像公開

  • 4

    NewJeans、ILLIT、LE SSERAFIM...... K-POPガールズグ…

  • 5

    ドイツ空軍ユーロファイター、緊迫のバルト海でロシ…

  • 6

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 7

    ロシアの隣りの強権国家までがロシア離れ、「ウクラ…

  • 8

    金価格、今年2倍超に高騰か──スイスの著名ストラテジ…

  • 9

    ドネツク州でロシアが過去最大の「戦車攻撃」を実施…

  • 10

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中