最新記事

債務問題

窮乏ギリシャが蒸し返す対ナチス戦争賠償の本気度

2015年3月19日(木)18時13分
ヘイリー・リチャードソン

ドイツは解決済みの立場

 ナチスの軍隊は3年半にわたってギリシャを占領し、国民を苦しめ経済を破壊した。アテネだけで餓死者が4万人を超え、ギリシャ中央銀行は膨大な資金を奪われた。

 だがドイツ政府は、東西両ドイツが旧連合国の米英仏ソと90年に調印したドイツ最終規定条約で、賠償問題は解決済みという立場を取っている。

 メルケル政権のステフェン・シーバート報道官は、賠償金の問題とギリシャへの補償は「法律的にも政治的にも解決済みだ」とした上で、各国は将来に目を向けて現在の問題に集中すべきだと言う。

 ドイツ財務省の報道官も、賠償金に関するギリシャ政府との交渉の必要性を否定し、ギリシャの債務問題から目をそらさせる策略だと主張した。

 財政危機以来、ギリシャとドイツの緊張は高まる一方だ。ドイツは10年にユーロ圏がギリシャに対して行った協調融資を主導する立場だった。ドイツの閣僚たちはギリシャの予算と賃金の削減を提唱した。いまギリシャ政府は、総額2400億ユーロに上る救済融資の内容について交渉を進めている。

 ユーロ圏の財務相会合は先月、ギリシャのバルファキス財務相が改革のリストを提出すると約束したことから、ギリシャの金融支援プログラムの4カ月延長に合意した。

 だがブリュッセルで先週行われた同会合では、デイセルブルム議長(オランダ)が「時間を浪費している」とギリシャを非難。バルファキスにまじめに交渉に取り組むこと、より詳細な改革のリストを提出することを求めた。

[2015年3月24日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米労働生産性、4─6月期は3.3%上昇に上方改定 

ビジネス

米新規失業保険申請は8000件増の23.7万件、予

ビジネス

米ADP民間雇用、8月は5.4万人増 予想下回る

ビジネス

米の雇用主提供医療保険料、来年6─7%上昇か=マー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...地球への衝突確率は? 監視と対策は十分か?
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 5
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 6
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「農産物の輸出額」が多い「…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 6
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中