最新記事

社会

ロシアにはダメ男しかいない!

2014年12月26日(金)12時00分
アンナ・ネムツォーワ

「幸せ」を買う女性たち

「出生数に男女差はないが、30歳くらいになると男性人口が減り始める。労災や戦争、自動車事故などで死んでいく。年金受給年齢の65歳まで生きる男性は、全体の半分に満たない。その結果、孤独な老後を送っている女性が何百万人もいる」と、モスカルコワは指摘する。

 モスクワのインテリ女性の多くが知っているように、結婚生活が永遠に続くとも限らない。何しろロシアの離婚率は50%前後に達している。
夫が妻を捨てるケースも多い。ウラジーミル・プーチン大統領も昨年6月、30年連れ添った元客室乗務員の妻リュドミラ(当時55歳)と離婚した。大統領府は否定しているが、前妻より25歳若い元新体操オリンピック金メダリスト、アリーナ・カバエワとの交際が噂されている。噂の真偽はともかく、大統領の支持率は下がっていない。

 近年、ロシアの多くのエリート男性が妻を捨てて若い女性に走っている。今年2月には、モスクワのセルゲイ・ソビアニン市長が実業家の妻エリーナ(結婚生活28年)と離婚した。

 最近は、プーチンの報道官であるドミトリー・ペスコフが妻を捨てて、フィギュアスケート(アイスダンス)の元オリンピック金メダリスト、タチアナ・ナフカに走ったというゴシップで持ち切りだ。

 ペスコフの前妻エカテリーナは外国誌のインタビューに応じ、夫の「裏切り」を暴露した。先日は大物財界人であるウラジーミル・ポターニンの妻ナタリアも、外国誌に夫との離婚訴訟について詳細に語ったばかりだ。

 成功したロシア男性は自由を謳歌できるが、「肝に銘じておくべきことがある」と、デンジンはくぎを刺す。「50歳を過ぎると、残りの生涯を独り身で送ることになりかねない。若い美女には見向きもされなくなる。幸せは金で買えない」

 もっとも、裕福な女性の中には金で幸せを買おうとする人たちもいる。モスクワ中心部に最近オープンしたナイトクラブ「マルシア」は、たちまち金持ち女性の人気スポットになった。ふかふかのじゅうたんが敷かれた薄暗いスペースで、騒々しい音楽に合わせて裸同然の男たちが踊る。この猥雑な空間に、女性たちは優しく扱ってくれる若くてハンサムな男性を求めてやって来る。

 1晩で使う金は、300〜2000ドル、もしくはそれ以上に上る。数週間前にはある40代の女性が3万ドル相当を支払い、女性の友人たちと若い男性の出会いの場をつくるためのパーティーを開いた。

 29歳のメーキャップアーティスト、ユリア・カルランポビッチは常連客の1人だ。たいてい、日付が変わる頃に顔を出し、朝8時まで友達と飲み明かす。「メニューから男をオーダーする」には約1000ドル掛かるが、男性と何をするかは「相手の男次第」だと、カルランポビッチは言う。「ほかの店とは雰囲気が違う......ここでは、自分が求められ、愛されていると感じることができる」

 オーナーのフランス人実業家ジャンミシェル・コスヌオーいわく、このような店は「パリではあり得ないが、モスクワでは決して珍しくない」という。

 コスヌオーはモスクワで十数店舗のナイトクラブを経営している。どの店も順調だが、女性客相手のマルシアは飛び抜けて高収益を上げているそうだ。

「ロシアの男たちは女性の扱い方を知らない」と彼は言う。「うちの店に来る美女たちと付き合うより、男仲間で酒を飲むほうが楽しいと思って
いる」

 コスヌオーの友人で、やはりロシアで仕事をするフランス人デザイナー、ジャック・ボンポリエールは違う考えだ。「ロシアの女性は世界一金持ち志向が強い。問題はそこだよ」

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米大手6銀行、第3四半期の配当金引き上げ計画を発表

ワールド

トランプ氏、フロリダの不法移民収容施設「ワニのアル

ビジネス

サンタンデールが英銀TSB買収、預金残高で英3位の

ワールド

イスラエル、60日間のガザ停戦確定に必要な条件に同
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    世紀の派手婚も、ベゾスにとっては普通の家庭がスニ…
  • 7
    あり?なし? 夫の目の前で共演者と...スカーレット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    未来の戦争に「アイアンマン」が参戦?両手から気流…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中