最新記事

アジア

ニッポン領土危機

「腰砕け外交」は副次的な原因にすぎない──周辺国に付け込まれ続ける国家的不作為とは

2010年11月10日(水)17時54分
横田 孝(本誌編集長・本誌国際版東京特派員)

かすむ存在 日本政府には能動的な外交戦略が欠けている Jeffrey Coolidge/Getty Images

 この国には領土と主権を守る気概があるのか──日本はこれまで以上に、この問いを突き付けられている。

 尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件で、中国の圧力に屈する形で船長を釈放した9月24日は日本にとって「国辱の日」となった。そして11月1日、日本の腰砕けの対応に乗じる形でロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領が北方領土・国後島を訪問。日本が固有の領土と主張するこの島をロシアの最高指導者がわが物顔で視察したことで、日本国民はわずか1カ月余りの間に2度も屈辱を味わった。

 日本の周辺国が領土的野心を燃やしていることは、驚くべきことではない。何しろ、世界各国がエネルギー資源をめぐって熾烈な争奪戦を繰り広げている時代だ。また、西岡武夫参院議長が言うように「哲学も理念も方針もない」菅直人政権の無策ぶりが、周辺国に付け入る隙を与えた側面もあるだろう。

 人材の先細りも一因だ。日本は「政治とカネ」の問題で、中国やロシアとの外交関係を真剣に考えてきた政治家を失ってきた。鈴木宗男の凋落は、対ロ関係に大きな影響を与えた。尖閣問題についても、中国と太いパイプを築いてきた小沢一郎が政治力を失っていなければ、違う結果になっていたかもしれない。

 だが、これらはあくまでも副次的な要因にすぎない。日本が中国やロシアに付け込まれている原因は、もっと根深いところにある。...本文続く

──ここから先は本日発売の『ニューズウィーク日本版』 2010年11月17日号をご覧ください。
<デジタル版のご購入はこちら
<iPad版、iPhone版のご購入はこちら
<定期購読のお申し込みはこちら
 または書店、駅売店にてお求めください

他にも
■「竹島を『独島』にした韓国の粘着質外交」など、読み応え満点です。
<最新号の目次はこちら

[2010年11月17日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 7

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 8

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中