最新記事

アフリカ

外交官にジンバブエ国営メディアの罠

2010年10月27日(水)18時31分
現地特派員(ジンバブエの報道規制のため匿名)

 どこを見ても意味ある改革の証拠は乏しい。中立の人権委員会も、09年以前の出来事を調査することはできないことになっている。08年の大統領選挙時には役人自ら暴力行為を働いたので、彼らがいちばん胸をなでおろしている。ムガベ大統領に仕える諜報担当者は00年に裁判で、MDCに属する2人の活動家を焼き殺したと指摘されたが、今も自由の身だ。

選挙はしても敗北は認めない

 ジンバブエに来る多くの外交官はMDC指導者らに明るい印象を受けるが、後にその楽観的な見方を捨て去ることになる。反対にアメリカの特使たちはずっと懐疑的なままだ。

 9月23日、訪米した超党派のジンバブエ代表団と会議を行った後、アフリカ担当の米国務次官補ジョニー・カーソンとアフリカ担当局長のミシェル・ギャビンは、草の根団体「ウィメン・オブ・ジンバブエ・アライズ」に対する最近の嫌がらせや、ムガベ支持者が憲法改正に関する討論集会を暴力で妨害したことを指摘して、「最近の政治的・人権的環境はまだ問題が多い」と語った。

 制裁解除を求めるジンバブエの交渉担当者からの圧力対して、「私たちの制裁は定期的な見直し課程にある」と米高官は答えた。「ただ人権侵害や土地の強制収用、政治プロセスに参加する人々に対する脅迫が続く限り、制裁が解除される可能性はないだろう」

 ジンバブエの代表団がワシントンに到着する1週間前、ムガベ政権で最も影響力のある閣僚の1人、ディディムス・ムタサは、与党のジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線はMDCのモーガン・ツァンギライ首相に国を統治させることは決してないと語った。「総選挙を行って彼がムガベに勝利するようなことがあっても、ジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線とジンバブエ国民はそれを受け入れない」と、ムタサは支持者に対して語った。

 活動家たちは、こんな状態で楽観的になるのは難しいと指摘している。

GlobalPost.com特約)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

三井住友FG、インド大手銀行に2400億円出資 約

ビジネス

米国は最大雇用に近い、経済と労働市場底堅い=クーグ

ビジネス

米関税がインフレと景気減速招く可能性、難しい決断=

ビジネス

中国製品への80%関税は「正しい」、市場開放すべき
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 2
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..最新技術で分かった「驚くべき姿」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 5
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 6
    骨は本物かニセモノか?...探検家コロンブスの「遺骨…
  • 7
    中高年になったら2種類の趣味を持っておこう...経営…
  • 8
    教皇選挙(コンクラーベ)で注目...「漁師の指輪」と…
  • 9
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 10
    韓国が「よく分からない国」になった理由...ダイナミ…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 7
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 8
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 9
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 10
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中