「ポケモンGO」は中国のスパイ? CIAの道具?...大人気ゲームを直撃した「スパイ疑惑」とは?

THE POKÉMON SPY PANIC

2025年1月8日(水)14時44分
ザック・ドーフマン(安全保障ジャーナリスト)

2024年ニューヨークで開催されたポケモンGOフェスの様子

米防諜当局は人気ARゲームに不安を募らせたが、2024年7月、ニューヨークのポケモンGOフェスは大盛況 AP/AFLO

16年にポケモンGOをリリースした時点では、ナイアンティックもポケモン社も、地政学上の落とし穴の有無をあらかじめチェックする専門のスタッフを擁していなかったと、ポケモン社の最高法務責任者を務めたドン・マゴーワン(Don McGowan)は振り返る。

そこで、同社に加わる前にマイクロソフトの対政府関係部門でサイバーセキュリティーを担当した経験を持つマゴーワンにお鉢が回ってきた。


「ナイアンティックは、ポケモンGOがこれほどまでにヒットするとは思ってもいなかった」と、マゴーワンは述べている。

マゴーワンは、誰も予想できなかった問題に対処することになった。ある日、ボスニアの地雷原でポケモンを探す人たちがいるというニュースを読んで驚いたことがあった。このときは、ワシントンに急行して国務省当局者に相談した。

【関連記事】米で大人気の「ポケモンGO」、ISISとの前線でプレイする猛者も登場

すると、「機密扱いになっている以外の、世界の地雷所在地のGPS情報を全て記した書類」を手渡されたという。その情報を直ちにナイアンティックで共有し、その場所ではゲームができないようにした。

中国のスパイ活動の道具?

愛好家だけでなく、このゲームそのものも地雷原にさまよい込んでいた。世界の多くの国が国家安全保障上の懸念を示し始めたのだ。

インドネシアとエジプトの治安当局は、ポケモンGOをスパイ活動の隠れみのだと批判。ロシアの要人たちは、ポケモンGOをCIAの道具、もしくは悪魔の代理人と呼んだ。イランは全面的に禁止し、中国も「地理的情報のセキュリティーを脅かす」との理由で禁止した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米主要港ロサンゼルス、5月の輸入は前年比9%減 対

ワールド

ベトナム、米との貿易交渉進展 主要な問題は未解決

ワールド

ベトナムがBRICS「パートナー国」に 10番目の

ワールド

トランプ米政権、入国制限に36カ国追加を検討
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中