最新記事

THE GLOBAL ECONOMY 2018

ビットコインに未来はない、主犯なき投資詐欺だ

2018年1月10日(水)12時39分
ルズベー・バチャ(シティーファルコンCEO)

Illustration by Sorbetto/Getty Images


0116cover-150.jpg<ニューズウィーク日本版1月10日発売号(2018年1月16日号) は、「好調」な世界経済の落とし穴を、ノーベル賞経済学者らが読み解く「THE GLOBAL ECONOMY 2018」特集。ジョセフ・スティグリッツ(ノーベル賞経済学者)、アンガス・ディートン(ノーベル賞経済学者)、モーリス・オブストフェルド(IMFチーフエコノミスト)、ローレンス・サマーズ(元米財務長官)、カイフー・リー(グーグル・チャイナ元総裁)、ダニエル・グロー(欧州政策研究センター所長)、エドマンド・フェルプス(ノーベル賞経済学者)らが寄稿するこの特集から、ビットコインのリスクを論じた記事を転載>

主流メディアもようやくビットコインに注目し始めた。いや、降って湧いた投資ブームで注目せざるを得なくなったというのが実情だろう。

ビットコイン相場は昨年初めから12月半ばまでに1600%超も上昇した。1ビットコイン(BTC)=100ドル強だった時期にまとまった投資をした人たちは、文字どおり億万長者になったことになる。

ビットコインの時価総額は12月には2500億ドルを超えた。年末までには相場は調整局面に入ったものの、今も乱高下が続いている。

12月の急騰をもたらしたのは何なのか。主な要因は、米規制当局がビットコインの先物取引を認可したこと。機関投資家の市場参入が予想され、期待感から現物相場も上昇した。他の国々もこの動きに倣うとすれば、今後さらに巨額の資金が流入するだろう。

そうではあっても、ただのオープンプラットフォームが時価総額で世界屈指の巨大企業と肩を並べるとは一体どういうことなのか。

「バブルにすぎない」──おそらくそれが答えだろう。

ドルであれ、円やポンドであれ、通貨は価値を示す尺度だ。例えば5ポンド紙幣は5ポンドの価値がある商品やサービスと交換できるが、5ポンド紙幣そのものに価値があるわけではない。

ビットコインももともとはそうした機能を持つ通貨として開発された。つまり、1BTCを提供すれば、1BTCの価値がある商品なりサービスを入手できるというコンセプトだ。しかし現実には1BTCを提供すれば1万5000ドルを入手できるという状況になった。その結果、ビットコインは価値の尺度、つまり通貨ではなくなった。通貨であれば、これほど価値が上がれば、今頃は超デフレになっているはずだが、そうはなっていない。

ならば、ビットコインは何なのか。別の資産か。価値を蓄積・保存できるという点では金塊に近いが、金塊のような実体はない。

遅れて投資すれば大損する

ビットコインはシステムだ。資金はそのシステムに流入している。システムの価値は人々の「認識」で決まる。

BTCをドルや円に換えれば、商品やサービスを買える。初期にビットコインに投資した人たちは新参者がどんどん資産をもたらしてくれたおかげで、現時点で換金すれば巨万の富を手にできる。その意味では、ビットコインはポンジ・スキーム、つまり資金を運用せずに、次々に投資を募って利回りを払う一種の投資詐欺のようなものだ。ただし、ビットコインはいわば分散型のポンジ・スキームで、誰かが仕組んだ詐欺ではなく、参加者全体がその仕組みを支えている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「気持ち悪い」「恥ずかしい...」ジェニファー・ロペ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中