太陽光+水素燃料電池で「電車が走る」未来へ...パナソニックの新発電システムが切り拓く道

新発電システムの導入・運用コストを下げる取り組み
今回のシステム納品に際して、パナソニックEW社では2つの新たな取り組みを実施した。その1つが、水素燃料電池システムの架台ユニット化だ。
純水素型燃料電池と排熱処理のための冷却塔、水素漏洩警報盤や動力盤などからなる架台ユニットを工場で製作して現場に搬入することで、大幅な工期の短縮が可能になった。「通常1カ月ほど掛かる現地工事が約10日間で完了しました」と、彦坂氏は説明する。
これまでは現場で基礎工事を行い、水素が通る配管や排熱のための配管などを埋め込む方法が取られていた。架台ユニット化することで、設置後のメンテナンスでも、基礎を掘り起こさずにできるというメリットがある。
もう1つの取り組みが、太陽光発電システムなどの見守りサービス「ソラネット」と、エネルギーの見える化サービス「P・TEM」を組み合わせた監視・保守サービスの提案だ。
パナソニックEW社が提供する「ソラネット」は、24時間365日の監視を実施する遠隔監視システム。発電機器の常時監視や故障発生時のメール送付、報告レポートの送付などをパナソニック側が行うことで、導入企業は運用時のサポートを得られる。
「ソラネット」でモニタリングした発電状況や機器の動作状況をパナソニックのクラウドシステムで「P・TEM」と連携させ、大阪メトロ本社での遠隔管理と電力の見える化を同時に実現するのが提案のポイントだ。
「モニタリングやメンテナンスに関わる監視・報告だけでなく、オプション機能として営業拠点のサイネージ(電子看板)での活用も可能です」と、彦坂氏は言う。

「再エネで電車を走らせる」挑戦はまだ始まったばかり。このようにシステムを整え、運用コストを下げる小さな一歩を積み重ねていく努力が不可欠だ。当然、発電コストの低減も必要になる。
だが公共交通機関には何より、高いレベルの信頼性が欠かせない。大阪メトロによると、今回の「太陽光+純水素型燃料電池」システム導入は再エネ由来の電源を鉄道電気系統に直接つなぐ、「鉄道品質」の高圧系統連系として画期的なケースになるという。
CO₂を排出せず、大容量のエネルギー貯蔵も可能な水素を太陽光と組み合わせれば、鉄道業界のカーボンニュートラルも視野に入ってくる。脱炭素化が「できない」産業はない――そんな時代が着実に近づいていると言えるだろう。
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