インフラ維持管理の新基準へ...老朽化をスマホ一つで点検できる調査アプリ「LD-Map」とは?
AI判定画面の例。実際の写真(左)とAI画像解析によってさびや穴を検出した画像(同右) ※新居浜市、八幡浜市で撮影されたものではありません 写真提供:パナソニックEW社
<街路灯の国内シェア約4割のパナソニック株式会社エレクトリックワークス社が、DX推進に豊富な実績を持つアルビト株式会社と共同開発した予防保全型インフラ維持管理DXサービス「LD-Map」。愛媛県で実証実験が進むこのアプリが、人手不足・財政難に悩む地方の救世主に?>
日本企業のたとえ小さな取り組みであっても、メディアが広く伝えていけば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。そのような発信の場をつくることをミッションに、ニューズウィーク日本版が立ち上げた「SDGsアワード」は今年、3年目を迎えました。
私たちは今年も、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。
高度経済成長期に集中的に整備された道路や上下水道は、耐用年数を迎えつつあり、定期点検や補修の遅れが致命的な事故につながる危険性を孕んでいる。加えて近年は、酷暑や豪雨など異常気象が構造物の劣化を一段と加速させている。
社会基盤の安全を守るためには計画的な更新が欠かせないにもかかわらず、特に地方では、財政難や人口減少により維持管理に従事する技術者や作業員が不足しており、老朽化への対応が後手に回っているのが実情だ。
そんななか、愛媛県で実証実験が進むDXサービスを駆使したインフラ維持管理の取り組みが注目を集めている。街路灯の国内シェア約40%を誇るパナソニック株式会社エレクトリックワークス社(以下、パナソニックEW社)が、インフラ設備の画像解析と補修に至るプロセス構築に実績を持つアルビト株式会社(以下、アルビト社)と共同で開発した画期的な点検ツールとは──。
「事後保全」から「予防保全」へ
新居浜市と八幡浜市では、デジタル技術の社会実装を通じて地域課題を解決する同県のプロジェクト「トライアングルエヒメ」の一環として、2024年8月から予防保全型インフラ維持管理DXサービス「LD-Map(Lighting Digital MAP)」の実証実験が行われている。
照明や配線器具などの電気設備を中心に手掛け、空間ソリューションを提供するパナソニックEW社は、街路灯やカーブミラーといった道路小規模付属物の点検・管理に活用されるこのアプリを、アルビト社とともに開発した。

道路設備の多くは自治体が管理しており、ほとんどの場合、何か異常が生じた際に都度対応する「事後保全」の形をとっている。
この体制では、物損・人身被害の事故リスクはもちろん、どうしても突発対応に当たる職員に負担を強いることになってしまう。民間事業者が、緊急工事に当たる人員をスムーズに確保できない可能性もある。
一方、LD-Mapで目指すのは「予防保全」だ。画像処理技術による老朽化判定で劣化の予兆を捉えられ、必要最低限の補修を施してリスクを減らし、突発的な費用や業務が発生するのを抑えることができる。





