最新記事

睡眠

CEOからの相談で多いのは「悪夢」──悪夢治療がよいリーダーシップを生む

How to Have Better Dreams

2022年6月24日(金)12時55分
ロビン・エーブラハムズ(ハーバード・ビジネススクール研究員)、ボリス・グロイスバーグ(同スクール教授)

人は眠っている間も、実は結構忙しい。食べたものを消化したり、性的興奮を感じたり、さまざまな意識レベルを行き来したり。その結果、睡眠中にさまざまな感覚を味わい、それが夢に反映される。そのような夢は強烈な肉体的感覚を伴うため、目が覚めた後も記憶に残りやすい。

例えば、歯が抜ける夢の記録は、古くは古代ギリシャまでさかのぼる。この夢は債務、死、出産など多くの事柄と結び付けて解釈されてきた。しかし、こうした夢を見る真の理由はもっと単純だ。その人は眠っている間に歯ぎしりしているのだ。

■悪夢 単なる「悪い夢」と悪夢は異なる。悪夢のほうが長く続き、記憶に残りやすく、恐怖などの強い感情を伴うことが多い。ほとんどの人がときどき悪夢を見るが、頻度や苦痛の程度は人それぞれだ。

凶悪犯罪や自然災害、戦争などによりトラウマを経験した人の90%近くが、悪夢を経験する。間接的なトラウマの経験も同様の影響を生む。メディアで悲惨な出来事の映像を見ると、しばらく悪夢を見続けることがある。

トラウマが引き金となる悪夢はたいてい、数週間もしくは数カ月で終わる。さらに長く続く場合は、脳が悪夢を習慣化している可能性がある。一定の条件が整うと、脳が自動的に「悪夢の台本」どおりに悪夢を生み出すのだ。

よく眠れなかったり、悪夢を見ることを恐れていたりする人は、昼間に気持ちが落ち込んだり、不安に襲われたりする場合もある。中には、知らず知らずのうちに眠ることを避けたがる人もいる。

ほかの夢と同じく、悪夢の原点は、睡眠に移行する途中の半覚醒状態にある。この状態で考えたことは夢に反映されやすい。夢の半分以上は、眠る前に考えたことや見たことで構成される。

頻繁に悪夢を見る人は、この半覚醒状態にうまく入れず、精神の興奮状態が続いたときに悪夢を見る傾向がある。眠りにくいと、精神が興奮状態になり、その結果ますます眠れなくなるという悪循環に陥るケースもある。

頻繁に悪夢を見る人は対策を講じることができるし、そうすべきだ。悪夢を見ることでネガティブな感情を解放しないと、その感情が日中の生活に悪影響を与えると心配する声も聞かれるが、ご心配なく。感情は水道管を詰まらせる泥水とは違うので、解放する必要はない。

悪夢を見る人は、同時にそれを断ち切るための精神的リソースを持っている可能性が高い。そうした人には夢をよく覚えている傾向があり、また一般の人よりも有意義で楽しい夢を見やすい。白昼夢や創造性に関するスコアが高い傾向もあり、この資質は次に紹介する治療法に役立つ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中