最新記事
演劇

新設4年で全47都道府県から学生集結 観光と芸術の融合目指す平田オリザの挑戦

2024年7月1日(月)09時38分
柾木博行(本誌記者)
平田オリザ

こまばアゴラ劇場の事務所にて HISAKO KAWASAKI-NEWSWEEK JAPAN

<現代演劇の旗手として、また文化政策のオピニオンリーダーとしても活躍する劇作家・平田オリザ。前回「「アートのライセンスビジネスが日本の生きる道」──平田オリザが語る「こまばアゴラ後」の活動」に続くロングインタビューの第3弾では、平田のもう一つの顔、教育者としての活動を取り上げる>

劇作家、劇団主宰者として活動をする平田は、2000〜05年に桜美林大学で演劇を教えたことを皮切りに、大阪大学、四国学院大学、東京藝術大学と高等教育に演劇を取り入れる試みを続けてきた。一方で、02年度から採用された国語の教科書に『対話劇を体験しよう』を書き下ろし、演劇を用いたコミュニケーション教育を自らも赴く形で全国各地の小中学校で展開している。

設立4年で47都道府県から学生が集まる大学

──この10年くらいで活動の拠点を豊岡にどんどんシフトしていくなかで、コロナのパンデミックがあって演劇祭も2021年は中止と、予定通りに進まなかった部分も多かったのでは?

そうですね。ただ、芸術文化観光専門職大学が予想以上に順調にいって、受験倍率も高いんです。今年高知県からの入学者がいて、開校から4年間で47都道府県全部から学生が来たんですけども、今どきそんな大学はなかなかないんですね。地元から定員増の期待も大きいですし、そっちに相当注力した3年間でした。コロナがあって注力せざるを得なかったところもあるんですけど(笑)。

演劇祭も順調にフリンジの応募が増えていて、もう200数十件、要するに日本最大級の演劇祭にはなっている。ただ、コロナで国際面が予定よりちょっと遅れている感じかな。大学でも去年からやっと留学生の受け入れが始まったり、国際交流の面はちょっとまだきついですね。とはいえ、円安なので、留学生が向こうから来る分にはいい。

──芸術文化観光専門職大学ですが、演劇の人材育成は平田さんが桜美林大学にいた頃から取り組まれてきた部分でイメージできるのですが、観光のための人材育成というのは?

観光学の世界で文化観光っていうジャンルがあって、今、文化庁もその文化観光にすごい力を入れています。文化庁が一番やっているのは美術館ですけど、観光資源として、演劇やダンス、パフォーマンスも含まれます。ブロードウェイのミュージカルとか、ベルリンフィルとか、全部あれは観光資源でもあるわけですよね。

そういうものを目当てに来ることを文化観光って呼ぶんですけど、そこを企画したり運営したり、あるいは実践できるような人材が日本には足りないので、その育成をするのが、うちの大学の一番の狙いです。

芸術文化観光専門職大学

平田が学長を務める芸術文化観光専門職大学の外観

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

北・東欧8カ国首脳、EUの防衛強化訴え ロシアは「

ビジネス

米ワーナー、パラマウントの買収案拒否の公算 17日

ビジネス

FRBの追加利下げ、インフレリスク高める可能性=ア

ワールド

トランプ氏支持率39%に低下、経済政策への不満広が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 8
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 8
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中