最新記事
世界経済

コンサル・監査あまりの時代が到来 マッキンゼー、アクセンチュアが大規模リストラに追い込まれたワケ

2023年4月19日(水)12時00分
真壁昭夫(多摩大学特別招聘教授) *PRESIDENT Onlineからの転載

業務効率化でコンサルティング依頼は急増したが...

そうした新しい業務運営の在り方を確立し、実際のマネジメント手法を組織に浸透させるために、マッキンゼーやアクセンチュアへのコンサルティング依頼は急増した。

コンサルティング各社は、顧客企業が新しい分野に進出し、いち早く安定した業務の運営体制を確立するために必要な方法論を提供して対価を得る。具体的にマッキンゼーなどは、経営戦略や財務、管理会計の理論を結合することによって、効率的に業務運営を行う標準的な手法を確立した。

そうしたサービスを利用することによって、IT関連分野の企業は、データの利用など自社の強みがより発揮できる分野に集中しやすくなった。コンサル業界でのリストラ増加は、IT先端分野での企業の成長性が低下していることを意味する。そうした変化を機敏に感じとり、早い段階でIT先端企業を去った人もいる。

コンサル出身のサンドバーグ氏はいち早くメタを去った

その一人として、2022年6月、シェリル・サンドバーグ女史はメタの最高執行責任者(COO)を辞すと表明した。それは、メタなどの成長の勢いが弱まり、新たな成長分野を探さなければならないという認識に基づいた意思決定だったように見える。ハーバード・ビジネス・スクールを修了した後、サンドバーグ女史はマッキンゼーでコンサルタントとして働いた。グーグルなどを経て、2008年、COOとしてサンドバーグ女史はフェイスブックに参画した。

メタ創業者のマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)にとって、経営コンサルタントとしてのスキル、グーグルでの広告ビジネスの高い成長を支えたサンドバーグ女史の実力は、SNS分野でのビジネスモデルを確立し、高い成長を実現するために喉から手が出るほど欲しかった要素だったはずだ。

このようにして、多くのIT先端企業は、コンサル業界出身の人材採用を強化した。また、アクセンチュアやソフトウエア分野への選択と集中を進めたIBMなどに、ビジネスモデルの確立や、新規事業の業務運営体制の企画、マネジメント手法などのコンサルティングを委託する企業も増えた。

その結果、世界的にコンサルタント人材の求人は急増した。一部では、組織運営などに関する理論に加え、人工知能(AI)やネットワーク・テクノロジーに精通した人材の争奪戦に拍車がかかった。

ビジネスモデルの行き詰まりを鮮明に理解している

しかし、高い成長がいつまでも続くことは考えづらい。2021年の秋ごろから、徐々にメタをはじめとするIT有力企業の成長鈍化懸念は高まった。株価も下落し始めた。

2022年3月に連邦準備制度理事会(FRB)は利上げを開始し、その後は急激に金融が引き締められた。世界全体で企業の資金調達などのコストも増加した。スタートアップ企業とGAFAなどの競争も激化した。SNSやサブスク型のビジネスモデルの優位性は行き詰まり、業績懸念は追加的に高まっている。

2023年2月には、ユーチューブのスーザン・ウォジスキーCEOの退任も発表された。ウォジスキー女史もベイン・アンド・カンパニーで経営コンサルタントとしてキャリアを積み、その上でグーグルに参画した。コンサルタントとして多くの企業を見てきた経験があるだけに、彼女らはビジネスモデルの行き詰まりをより鮮明に理解しているはずだ。

事件
ニューズウィーク日本版メンバーシップ登録
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イラン、米と核問題限定の二国間協議要求 開催地変更

ビジネス

再送これまでの米利下げ、雇用の健全性に寄与=リッチ

ビジネス

訂正-自動運転の米ウェイモ、評価額1260億ドルで

ワールド

プーチン氏とサウジ皇太子が電話会談、OPECプラス
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗り物から「勝手に退出」する客の映像にSNS批判殺到
  • 3
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れるアメリカ」に向き合う「日本の戦略」とは?
  • 4
    地球の近くで「第2の地球」が発見されたかも! その…
  • 5
    トランプ不信から中国に接近した欧州外交の誤算
  • 6
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 7
    最長45日も潜伏か...世界が警戒する「ニパウイルス」…
  • 8
    ICE射殺事件で見えたトランプ政権の「ほころび」――ア…
  • 9
    少子高齢化は国防の危機──社会保障を切り捨てるロシ…
  • 10
    「耐えられない...!」アライグマをペットにしている…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 5
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 6
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 7
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 8
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 9
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 10
    パキスタン戦闘機「JF17」に輸出交渉が相次ぐ? 200…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中