最新記事

ブランド

「後発だった」ナイキがスニーカー市場でトップになった理由

2017年11月3日(金)16時30分
東洋経済新報社出版局 ※東洋経済オンラインより転載

toyokeizai171103-2.jpg

野口 実(のぐち みのる)エービーシー・マート代表取締役社長。1965年岐阜県生まれ。中央大学経済学部を卒業後、シヤチハタ東京商事を経て、インターナショナル・トレーディング・コーポレーション(現ABCマート)入社。ホーキンス事業部長、取締役営業本部長、常務取締役などを経て2007年より現職。入社後、同社創業者の薫陶を受ける。座右の銘は「机で分析、現場で検証」。現在でも週末は自ら店頭に立ち接客を行っている(撮影:梅谷秀司)

ナイキイズムは今も健在

――アスリートを重視する姿勢は、今もナイキに根付いていると?

ナイキという企業と接していると、ナイキイズムが非常に強いと感じます。ミーティングでも「つねに変化していかなければならない」という言葉を聞きます。ナイキでは、管理職のみならず多くの社員が同じ哲学の下でビジネスをしているのです。

そうした変化を受け入れる姿勢は、商品の革新性のみならず、人事異動にも表れています。ナイキは好調なときでも、大きな人事異動を行います。『シュードッグ』の中でも、西海岸と東海岸の担当者をいきなり入れ替えるという話があります。そうした変化が人を育てることにつながる。私自身も学ぶべきところだと思いますね。

とはいえ、時に石頭だと感じることもあります(笑)。アメリカと日本の事情は違うので、日本ではこうしたほうが売れるはずだと意見を言っても、それがスポーツメーカーとしてのポリシーに反すると判断されると、反映されることは難しい。もちろん、きちんと耳を傾けてはくれますが。

大衆迎合するのではなく、あくまでアスリート目線でスポーツに適したものを作るというのがナイキのベースにあるのでしょう。こちらとしても融通が利かないなと思いつつも、頑固者をほほ笑ませるためについ躍起になってしまう。頑固者の一笑は価値がありますから(笑)。そういう魅力はありますね。

――創業者のフィル・ナイト氏に会ったことはありますか。

6年くらい前、ナイキ本社内の社員用レストランでちらっとお見掛けしたくらいで、私にとっては伝説の人物です。企業家としてというよりも、「NIKE」というブランドを創り上げたクリエーターとして、圧倒的なブランドイメージを世界に印象付けたわけですから。

当時、彼はもう会長職に就いていたのですが、その社員食堂には頻繁に行っているようで、いつも決まった席、しかも大勢の社員がいる普通の席の一つに座るという話を聞きました。情熱を冷ますことなどできない方なのでしょう。

彼は引退後もずっとナイキに大きな影響を与えているのでしょうが、ナイキとのビジネス経験や、本書『シュードック』を通して感じるかぎり、独裁者タイプではない。人に任せるところは任せきる。正社員第1号のジェフ・ジョンソンとのかかわりの中でもそれがよく表れていますよね。ナイキ独自のカルチャーを浸透させていくことで、人を育んでいったのだということがよくわかりました。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インドCPI、11月は過去最低から+0.71%に加

ビジネス

中国の新規銀行融資、11月は予想下回る3900億元

ビジネス

仏ルノー、モビライズ部門再編 一部事業撤退・縮小

ビジネス

ECB、大手110行に地政学リスクの検証要請へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれなかった「ビートルズ」のメンバーは?
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 5
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 6
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナ…
  • 7
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中