最新記事

自動車

水素燃料電池車の時代は本当に来るか

トヨタが決断した特許の無償提供で開発競争に拍車が掛かりそうだが

2015年1月19日(月)12時42分
シュアン・シム

起爆剤 トヨタの大盤振る舞いは新たな革命をもたらすか(14年11月の同社の燃料電池車「ミライ」発表会) Yuya Shino-Reuters

 水素で走る燃料電池車(FCV)の普及を促進するため、自社が持つ特許をすべて無償提供する──トヨタの先週の発表をきっかけに、FCVの新開発に拍車が掛かるかもしれない。

 トヨタが競争相手を利するような行動に出たのは、技術を独占するより公開して競争を促したほうが市場の成長につながる、という判断ゆえだ。「トヨタ1社でFCVを15車種もつくることはない」と、米自動車関連サイトの編集者ジョン・オデルは言う。「1車種だけでは消費者の関心は続かない」

 FCV普及にとって大きな障害となっているのは燃料だ、という声がある。FCVの販売台数が最多のカリフォルニア州でも今のところ、燃料ステーションの数は圧倒的に少ない。より多くのメーカーが参入すれば、ステーションも増設されやすいだろう。

 ほかにも問題はある。アメリカではいまだに「水素を使う燃料電池車は爆発しやすい」という誤った認識を持つ人々がいる。

 水素燃料のよりクリーンな生産方法も考案しなければならない。水素燃料の約95%は温室効果ガスのメタンから作られるが、燃料電池を作る際には二酸化炭素や一酸化炭素が発生する。

 トヨタが全特許のうち、水素ステーション関連の約70件については無期限での無償公開としたのも、インフラ整備を重視したためだ。自ら開発競争の起爆剤となり、市場をつくり出すトヨタの狙いが当たれば、燃料電池車は思ったより早く手の届く存在になるかもしれない。

[2015年1月20日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

欧州首脳、ウクライナ停戦でトランプ氏提案への支持表

ワールド

インタビュー:高市新政権、「なんちゃって連立」で変

ワールド

為替はファンダメンタルズ反映し安定推移が望ましい=

ワールド

ベトナムのガソリン二輪車規制、日本が見直し申し入れ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 5
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 6
    米軍、B-1B爆撃機4機を日本に展開──中国・ロシア・北…
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 9
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 10
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 8
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 9
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 10
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中