最新記事

欧州経済

再びギリシャに迫るデフォルト危機

債務免除に応じるより破綻させたほうが得をするヘッジファンドとの協議が難航中

2012年1月17日(火)17時44分
マイケル・ゴールドファーブ

火種再燃 新たなデフォルト危機が3月に迫る(アテネでのデモ、昨年12月) Yiorgos Karahalis-Reuters

 昨年、世界を震え上がらせたギリシャ危機が再燃しそうだ。悪くすると今度こそ、債務不履行(デフォルト)に陥りかねない。

 ギリシャ国債を保有するEUなどが債権の一部放棄を含む大型支援策に合意したのは昨年11月。首相も交代し、ギリシャのデフォルトから第2の世界金融危機が始まるという悪夢のシナリオはなんとか回避された。

 だがここへきて、イタリアで国債の利回りが急上昇。先週には米格付け会社のスタンダード&プアーズ(S&P)がフランス国債の格付けを最上位のトリプルAから一段階引き下げ、他の欧州8カ国も一斉に格下げされると、ギリシャ情勢が再び欧州債務危機の焦点に浮上してきた。

 ギリシャがEUとIMF(国際通貨基金)の支援を受け続けるには、ギリシャ国債を保有する民間債権者から債務の減免を受けることが条件の1つとなっている。現在、民間の銀行やヘッジファンド(利害が一致するとは限らない)とギリシャ当局の間で、債務減免の際の金利水準をめぐる協議が続いているが、交渉は暗礁に乗り上げている。

 EU、IMF、ECB(欧州中央銀行)で構成し「トロイカ」とも呼ばれる3者合同調査団も、集中協議のため今週アテネに飛ぶが、先行きは不透明。交渉が決裂すれば、3月20日に期限を迎える多額の国債を償還できず、デフォルトに陥る可能性が強まる。

 英ガーディアン紙のラリー・エリオットは協議の内実を見事に形容している。「これはサルトルの(有名な戯曲)『出口なし』の国際金融バージョンだ。互いに相手を嫌っている3者(ギリシャ当局と民間債権者、トロイカ)が一部屋に長時間閉じ込められるという地獄だ」

 最大の難関は、一部の債権者が50%の債務免除(ヘアカット)を受け入れない可能性がありそうなこと。彼らはギリシャがデフォルトした場合にクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)で保険金を受け取る契約を結んでいるため、いっそギリシャをデフォルトさせてユーロを離脱したほうが得をする。

 ドイツ政府はギリシャにもう一度チャンスを与えようと躍起になっている。ギリシャのエカシメリニ紙によれば、アンゲラ・メルケル独首相はギリシャに対し、緊縮財政による苦難はあるものの、国の未来は明るいというメッセージを発し続けている。「IMFが似たような(緊縮財政)プログラムを導入した事例は過去にも多くある。そうした国では一定の不況期を経た後に、力強い成長を遂げている」と。

 さらに、メルケルはこう付け加えたという。「ギリシャも少しづつ進歩している」

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インフレ低下なら年内利下げ支持=米ミネアポリス連銀

ワールド

日米首脳会談、防衛装備の協力強化やエネルギーなど協

ワールド

ブラジルで小型機墜落しバスに衝突、2人死亡 サンパ

ビジネス

サムスントップ巡る訴訟、検察が最高裁に上告
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国経済ピークアウト
特集:中国経済ピークアウト
2025年2月11日号(2/ 4発売)

AIやEVは輝き、バブル崩壊と需要減が影を落とす。中国「14億経済」の現在地と未来図を読む

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 2
    戦場に響き渡る叫び声...「尋問映像」で話題の北朝鮮兵が拘束される衝撃シーン ウクライナ報道機関が公開
  • 3
    Netflixが真面目に宣伝さえすれば...世界一の名作ドラマは是枝監督『阿修羅のごとく』で間違いない
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 6
    老化を防ぐ「食事パターン」とは?...長寿の腸内細菌…
  • 7
    教職不人気で加速する「教員の学力低下」の深刻度
  • 8
    ドイツ経済「景気低迷」は深刻......統一後で初の3年…
  • 9
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 10
    連邦政府職員を「ディープステート」として国民の敵…
  • 1
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 5
    「体が1日中だるい...」原因は食事にあり? エネルギ…
  • 6
    教職不人気で加速する「教員の学力低下」の深刻度
  • 7
    「靴下を履いて寝る」が実は正しい? 健康で快適な睡…
  • 8
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 9
    戦場に響き渡る叫び声...「尋問映像」で話題の北朝鮮…
  • 10
    マイクロプラスチックが「脳の血流」を長期間にわた…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 5
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 6
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中