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携帯ネットでインド版ビッグバンが始まった

2011年2月23日(水)18時34分
ジェイソン・オーバードーフ

 既にネットや携帯端末で利用できるビジネスで注目を集める商品を開発している企業も多い。たとえばトムソン・ロイター・インドの「ロイター・マーケットライト」は、SMS(ショート・メッセージ・サービス)で農家に天気や穀物価格情報を提供している。高速通信と大きなタッチスクリーン画面によって情報アクセスがさらに容易になれば、さらに新しく複雑なサービスが生まれることになる。

 また、読み書きがまったく、もしくはほとんどできないインド人のために音声や映像の情報を配信する技術は、何年もの間、企業や援助団体が取り組んできた多くの問題を解決できる。「政府からの『家族計画』に関する情報を、普通の携帯電話でどうやって提供すればいいのか?」と、知識社会センターでまさにそうしたプロジェクトに取り組むスードは言う。「第2世代の携帯では、実用的ではない多くのアイデアが出てきた。たとえば、コンドームの『正しい使い方』の写真を利用者の端末にどう送るのかなんて、骨が折れる問題だ」

財政赤字も20%削減できる

 デルテックス・インフォテック社のように、企業がスマートフォンを通じて研修やビデオ会議を実施できるサービスを提供している会社もあるが、もっとも効果を発揮するのはインド政府がらみのものだろう。

 政府はすでに情報のオンライン化に多額の投資を行っていて、ユニークIDというシステムによって、すべてのインド人に生態認証に基づいた認識番号を割り当てようとしている。携帯のネットでユーザーの身元を生態認識することが可能になるため、いまだ銀行口座をもたない50%のインド人に金融サービスを提供できる。そうなれば、本領を発揮するのはネットバンキングだ。大きな波及効果が期待できると、マッキンゼーは言う。

 インド政府の個人世帯への支払いは現在、インドの1人当たり国民所得の3分の1ほどを占めている。直接的な電子送金に変えることで、インド政府はその10分の1を節約でき、正しい支払い対象者に支払われたかも確認できる。さらに、これによって財政赤字の20%削減あるいは社会福祉費の25%増にもつながる。

 それこそ革命だ。

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