SPECIAL ADVERTISING SECTION

自分を創る音の風景

vol.1 雅楽士 東儀秀樹さん

2014年03月18日(火)12時01分

奈良時代から続く楽家(がくけ)と呼ばれる雅楽の家系に生まれた由緒正しき雅楽師でありながら、96年のファースト・アルバム以来、ロックやポップスなどジャンルの垣根を飛び越えながら雅楽の世界に常に新風を吹き込んできた東儀秀樹。国際的な活動を展開し、雅楽の魅力を広く伝えてきた彼の音楽観を形作ったもの、そしてその背景にある音楽への情熱についてお話を窺った。

東儀秀樹

──東儀さんにとって一番古い<音の記憶>とはどのようなものなんでしょうか。
「父の仕事の関係で、1歳から7歳までタイのバンコクに住んでいたんですね。いろんな国籍の子どもたちが集まるインターナショナル・スクールに通ってて、幼稚園のころからビートルズのポール(・マッカートニー)が好きでした。前髪を眉毛ギリギリまで伸ばしてポールの真似をしてましたね(笑)。あと、父親がクラシック好きだったので、自宅ではベートーヴェンの交響曲がよく流れてました。母親はミュージカルや映画音楽好き。僕もその影響で『マイ・フェア・レディ』を好きになって、ナット・キング・コールが歌った劇中歌をよく諳んじていたようです」

──幼少時代を過ごしたバンコクの町中ではどんな音が流れていたんでしょうか。
「今ではバンコクでも普通にポップスやロックが流れてますけど、当時はポップスの代わりに演歌みたいな地元の歌謡曲が流れてたんです。車もあまり走っていなくて、空港から町中への道もずっと田んぼが続いてましたね。渋滞なんてありませんでした。なにせ50年前ですからね(笑)」

──当時のバンコクの風景が東儀さんにとっての原風景になっているわけですね。
「そうですね。親は忙しかったので、僕はお手伝いさんに可愛がってもらったんです。いろんな場所に連れていってもらいましたね。屋台の食べ物も片っ端から食べさせてもらいましたし、そのとき食べたものの味はしっかり覚えてます。今もバンコクに行くと高級料理店ではなく屋台のほうに行くんです。そっちのほうが美味しいですし、お腹が強いから何を食べてもお腹を壊さない(笑)。現地の人の生活に紛れ込まないと、その国の個性は分からないんです」

──メキシコにも住んでいらっしゃったんですよね。
「そうですね。小学校2年から中学校1年まで東京にいて、その後、11歳から12歳までがメキシコ。東京にいたころはヒッピー文化に興味を持っていたんです。当時の僕は絵描きになりたかったので、ウチの親が芸大で油絵を専攻している学生を自宅に招いていたんですね。その学生がヒッピー文化に傾倒していて、僕に反戦フォークやブルースを教えてくれたんです。ちょうどそういう時期メキシコに行ったんですけど、60年代のメキシコはアメリカのヒッピー文化がダイレクトに入ってきていたので、奇抜な格好をした若者たちも多かった。そのころから僕もハード・ロックやプログレッシヴ・ロックにハマっていったんです。ピンク・フロイドとかエマーソン・レイク&パーマーが好きで、ギターでコピーもしました」

MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    世紀の派手婚も、ベゾスにとっては普通の家庭がスニ…
  • 7
    あり?なし? 夫の目の前で共演者と...スカーレット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    未来の戦争に「アイアンマン」が参戦?両手から気流…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中