コラム

失恋から生まれた、可愛くも残虐なキャラクターの小宇宙

2016年07月12日(火)11時05分

"It's gonna be okay right now."

Winai Namwongさん(@mangaday)が投稿した動画 -

"It's gonna be okay right now."

 だが、ナムウォンが描く世界は、淡い青春や可愛らしさだけではない。無邪気さとは相反する残虐性も存在する。彼にとってはそれも青春が孕む大きな要素なのだろう。

 理由を問うと、「愛は、キュートであると同時に残酷だから」と、はっきりした答えが返ってきた。実のところ、ナムウォンのアート・プロジェクト「Mr.fail」が生まれたきっかけも、彼自身の失恋だった。胸が張り裂ける悲しみ、失望と孤独を味わい、それがプロジェクトのインスピレーションになったという。

【参考記事】恋人たちを撮ることが、自分のセラピーにもなった

 結果として、彼はラッキーだったのだろう。そうした苦悩から逃れることができた。悲しみや怒りの感情をヴィジュアル化した時、また、同じように孤独を味わっている者に接した時、なぜか気分が楽になることに彼は気付いたのである。

 それらは、ナムウォンのこのプロジェクトの大きな核になっている。事実、プロジェクトのサブタイトルは、You will not be lonely anymore because we are lonely together.――みんなが孤独とわかれば、もう孤独じゃないよ――なのである。

今回ご紹介したInstagramフォトグラファー:
Winai Namwong @mangaday

"For you."

Winai Namwongさん(@mangaday)が投稿した動画 -

"For you."(ナムウォン式 Fワードの表現)

プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

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