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和平交渉停滞、ロシア軍の春の攻勢に直面 ウクライナ、最大の焦点は「要塞地帯」

2026年3月27日(金)12時50分
ウクライナ南東部ザポリージャ州の前線で、ロシア軍に向けて主力自走榴弾砲を発射するウクライナ兵。3月18日撮影。 Andriy Andriyenko/Press Service of the 65th Separate Mechanized Brigade of the Ukrainian Armed Forces/Handout via

ウクライナ南東部ザポリージャ州の前線で、ロシア軍に向けて主力自走榴弾砲を発射するウクライナ兵。3月18日撮影。 Andriy Andriyenko/Press Service of the 65th Separate Mechanized Brigade of the Ukrainian Armed Forces/Handout via

米国が後押しする和平交渉が停滞する中、ウクライナの前線地域では、ウ‌クライナ軍が最近の戦術的成功や中距離攻撃などの新戦術を拠り所に、ロシア軍の春の攻勢を食い止めようとしている。

最大の焦​点となるのが、ウクライナ東部ドネツク州に広がる「要塞地帯」だ。厳重に防衛された都市群からなるこの一帯の放棄を、ロシア側は和平交渉の条件としてウクライナに繰り返し突きつけてきた。

米シンクタンク「戦争研究所(ISW)」によると、ロシ⁠ア軍は先週、この要塞地帯北端のスラビャンスクの北東で大隊規模の攻​撃を開始した。南端のポクロウシクやコンスタンチノフカ近郊でも小規模な攻撃が続いており、より大規模な攻勢に向けた地ならしが進んでいるとみられる。

スラビャンスク当局は20日、ロシア軍が東方へ20キロ迫ったことを受け、市内の子どもたちに避難を指示した。情勢の悪化を示す動きだ。

フィラデルフィアの外交政策研究所(FPRI)上級研究員のロブ・リー氏は、兵力ではロシアが依然として上回るものの、ウクライナ側の戦術的攻撃力の向上やドローン能力の進化が、モスクワの進撃ペースを鈍らせる可能性があると指摘する。

「ロシアには今年中に進軍を続けるのに十分な兵力がまだある」とリー氏は述べた。「どこまで進めるかは未知数だ」

ウクラ⁠イナ軍は先月、南東戦線で久々の勝利を収め、一部の領土を奪い返した。米実業家イーロン・マスク氏の衛星通信サービス「スターリンク」が、ロシアによる無許可使用を阻止する対策を講じたことが「援軍」となった。

ウクライナ側は、新たに投入される兵士数を上回る数のロシア部隊を撃破し始めていると発表。これはフェドロフ国防相が掲げ⁠る、技術主導かつ​成果指標重視の戦争計画の柱の一つだ。ロシア側は自軍の損害に関するウクライナ側の主張を否定している。

前線での戦闘激化と並行して、イランでの紛争に米国が関心を奪われ、原油価格の高騰でロシアの財政が潤いつつある。中東での戦争は、ウクライナが都市やエネルギーインフラ、軍事施設の防衛を頼っている米国製防空兵器の供給にも影を落としている。

財政面でも不安が募る。ハンガリーが900億ユーロ(約16兆5800億円)の欧州連合(EU)による融資を阻止しており、ウクライナの資金繰りは綱渡りの状態が続く。前線の兵員不足も依然として解消されていない。

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