コラム

アメリカの貧困を浮き彫りにする「地理学」プロジェクト

2016年05月24日(火)10時54分

Farmworker camp. Alpaugh, CA. #geographyofpoverty

Matt Blackさん(@mattblack_blackmatt)が投稿した写真 -

カリフォルニア州アルパウの農場労働者のキャンプ
ニューヨークのポートオーソリティ・バスターミナル

"The Geography of Poverty"の作品は、白黒写真のオーソドックスなスタイルで力強さとシンプルさを前面に押し出している。大半の写真は、ディテールよりも構図を重視したものだ。それは、正方形の写真フォーマットともよくマッチし、より重厚な感覚を与えながら、アメリカに潜む貧困問題の深さを浮き彫りにする。

 ブラック自身は否定したが、非常にコンセプチュアルな作品でもある。切り口のアイディア、練り上げられたプラン、またはキャプションの的を射たシンプル性――そうしたものがまさしくコンセプチュアルだ。それがなければ、広大なアメリカを貧困という枠組みで切り取った大プロジェクトは成功しなかったかもしれない。

【参考記事】Picture Power「崩壊した街」に残る住民のリアル

 まず、アメリカを横断・縦断する"The Geography of Poverty"で選ばれた町は、隣町との距離が200~300マイル以内に収まるようになっている。それは彼自身が言っているように、取材対象は、決してアウトライアー(=特別なはみ出しもの)ではない、という信念のためだ。さらにそれを証明し、強調するため、多くの作品には、町、あるいは地域の人口と貧困率が記されている。政府のセンサスのアプリケーションを使って導き出したもので、またその取材場所は貧困率が20%を超える場所が選ばれている。こうしたものが、ヴィジュアルの力強いシンプルさと重なって、強烈なプロジェクトとして、見るものをさらに刺激するのである。

"The Geography of Poverty"は、幾つかの章を終えたが、まだ継続中だ。「写真は人にメッセージを与える。取材場所、取材対象には責任感がつきまとう」というブラック。自分の育った場所への責任感として始まったこのプロジェクトは、さらなる深みへと発展していくかもしれない。

今回ご紹介したInstagramフォトグラファー:
Matt Black @mattblack_blackmatt

ミシガン州、フリントで

プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏、FRB次期議長の承認に自信 民主党の支

ワールド

エプスタイン文書追加公開、ラトニック・ウォーシュ両

ワールド

再送-米ミネソタ州での移民取り締まり、停止申し立て

ワールド

移民取り締まり抗議デモ、米連邦政府は原則不介入へ=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 2
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 3
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」から生まれる
  • 4
    世界初、太陽光だけで走る完全自己充電バイク...イタ…
  • 5
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 6
    「着てない妻」をSNSに...ベッカム長男の豪遊投稿に…
  • 7
    日本はすでに世界第4位の移民受け入れ国...実は開放…
  • 8
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    日本経済を中国市場から切り離すべきなのか
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 5
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 6
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 7
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 8
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 9
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 10
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story