コラム

new-style(新型)coronavirus, stay reki(渡航歴)...厚労省の新型ウイルス情報の英語がひどかった

2020年02月23日(日)10時00分

メディアが報じ、新型ウイルスの情報発信は改善されたけれど

2月18日になると、The Japan Timesがこの問題について取り上げ、私も取材を受けました(記事はこちら)。20日には菅官房長官が、機械翻訳(自動翻訳)ではなく人間の翻訳者を使って厚労省のサイトで英語情報の更新を始めていると述べたようです。実際、その後に厚労省のサイトを訪れると、確かに改善されていました。

2月22日現在、厚労省の日本語のサイトには、トップページの真ん中に (ENGLISH) Latest information on Coronavirus disease 2019 (COVID-19) is HERE. と出ており、そこからコロナウイルスの英語情報ページに飛べます。

日本語サイトの右上にある「English site」をクリックすれば、厚労省の英語ページに移りますが、そこにも現在は Latest information on Coronavirus disease 2019 (COVID-19) is HERE. と分かりやすい位置に出ており、そこから同じコロナウイルスの英語情報ページに飛べます(なお、この英語情報ページ、2月18日の時点でも存在していましたが、そこに行くリンクがコロナウイルス関連の情報が載った日本語のページの真ん中にしかなかったので、英語しか理解しない人にとっては見つけにくい情報となっていました)。

ただし、以前と変わらず日本語サイトの左上にある「言語切替」で英語を選択すると、「機械翻訳であること」のお知らせメッセージが出て、「English site」から移る英語ページとは別の、その日本語ページを機械翻訳したページに飛びます。

そしてそこには、2月16日に確認したときと同じ理解しがたい英語が、今も変わらずあふれていました(「機械翻訳であること」のお知らせメッセージの中に、上述の Latest information on Coronavirus disease 2019 (COVID-19) is HERE. の文言と英語情報ページへのリンクはあるので、機械翻訳されたページよりそちらのほうへ導く努力はしているようですが)。

細かくなってしまいましたが、私が言いたいのは、新型コロナウイルスに関する英語情報ページへのアクセスは改善されたものの、機械翻訳に関わる問題は今も変わらないということです。

kopp20200222mhlw-2.png

厚労省のトップページから「言語切替」で英語を選択をした場合に表示される機械翻訳されたページ(2020年2月21日)

例えば、上図は日本語サイトのトップページを機械翻訳した英語ページですが、ここには機械翻訳にありがちな典型的な問題が多く見られます。

文法が分かりにくかったり、不自然だったり、新型コロナウイルスの「新型」をnew-styleとしていたり。また、このページではありませんが、「渡航歴」をstay rekiとするなど、翻訳されずにローマ字のまま残ってしまっている言葉もあります。

とはいえ、全ての機械翻訳が同じクオリティというわけではないようです。比較のため、先ほど引用した私のツイートに出てくる英訳の日本語の原文をそのままグーグル翻訳に入れると、厚労省のサイトにあるものよりも随分と質の高い翻訳が出てきました。

厚労省はサイトにある機械翻訳機能の導入にいくら払ったのでしょうか。あのレベルの機械翻訳になってしまうようであれば、グーグル翻訳など、もっと質が高い機械翻訳をうまく活用する方法を考えたほうがいいと思います。

プロフィール

ロッシェル・カップ

Rochelle Kopp 北九州市立大学英米学科グローバルビジネスプログラム教授。日本の多国籍企業の海外進出や海外企業の日本拠点をサポートするジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社の創立者兼社長。イェ−ル大学歴史学部卒業、シガゴ大学経営大学院修了(MBA)。『英語の品格』(共著)、『反省しないアメリカ人をあつかう方法34』『日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?』『日本企業がシリコンバレーのスピードを身につける方法』(共著)など著書多数。最新刊は『マンガでわかる外国人との働き方』(共著)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米CPI、4月は前月比+0.3%・前年比+3.4%

ワールド

米大統領選、バイデン氏とトランプ氏の支持拮抗 第3

ビジネス

大手3銀の今期純利益3.3兆円、最高益更新へ 資金

ワールド

ニューカレドニアの暴動で3人死亡、仏議会の選挙制度
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 4

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 8

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story