コラム

トランプ政権の勢いに変調の兆しが漂い始めた

2025年12月24日(水)15時15分

2点目の問題は「エプスタイン・ファイル」の公開です。少女たちへの性的暴力事件の審理中に自殺した大富豪、ジェフリー・エプスタインとトランプ氏が親友であったのは周知の事実です。ですが、そのエプスタインが悪質な犯罪に手を染めていたことについては、大統領は知らなかったとしています。その「潔白」を証明するために、エプスタインの捜査資料については、大騒動の結果、与野党の合意で公開することが決定されて、その公開期日が12月21日にやってきました。

司法省は、文書の多くを墨塗りとし、また多くの写真を非公開としたうえで「ファイル」を公開しました。こうした扱いは、野党・民主党側だけでなく、与党・共和党の側からも強い批判が上がっています。そんな中、最も忠実なトランプ氏の支持者だと思われていた2人の共和党女性下院議員が公然と反旗を翻して話題になっています。


なかでも、議会下院の共和党議員団の要職から転出して、26年11月のニューヨーク州知事選挙に立候補すると見られていたエリス・ステファニク議員が、知事選から降りるだけでなく、議員も辞めると宣言したのは驚きをもって受け止められました。これに対しては、ハーバード卒で従軍経験もあるという「エリート」の彼女に対して、トランプ大統領が最後まで信認を与えなかったという説が報じられています。彼女が一旦は国連大使に指名されながら断念させられたのも、議席数を守るだけでなく「常識的な国連外交」をされるのを大統領が警戒したから、そんなことも言われています。ですが、ステファニク議員としては、エプスタイン疑惑に目をつぶることは、以降の政治家としてのキャリアを考えるとできなかったのだと思われます。

いずれにしても、エプスタイン疑惑という問題について、大統領と若手や女性の共和党議員の間に、そしてコア支持者との間にも亀裂が生じているのは事実です。おそらく大統領としては、スキャンダラスな点も含めて人気のあった1期目の選挙から長い歳月が経ち、有権者も政治家も世代が変わり、意識も変わっていることが受け止めきれていないのだと考えられます。

ベネズエラ問題と、エプスタイン問題が深刻なのは、左右対立とか分断という構図では説明できないからです。他でもないお膝元の共和党や、コアの支持者が離反しているわけで、これに対する政権側の動きには明らかな混乱が見られます。これまで政権の実務を支えてきたスーザン・ワイルズ首席補佐官も、そろそろ「離脱」モードに入ったという噂もあります。中間選挙の年を迎える中で、年明けのトランプ政権の周囲には別の流れが押し寄せてきているのかもしれません。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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