コラム

「健康危機管理庁」構想、役所を作れば改善するのか?

2022年06月01日(水)11時30分

日本の場合は、そうした対応が取られることはありませんでした。在宅療養中に肺炎が憎悪した患者が落命するのは仕方がないが、通常診療で「手遅れ」という事態が起きれば、医療過誤事例となって医師は責任を追及されます。コロナ禍の中でも、こうした制度は変更されませんでした。いかにも杓子定規ですが、医師会や厚労省の頭が硬いからではありません。それが日本の法制度だからです。

他にも、杓子定規な制度はたくさんあります。例えば、都道府県の枠を超えて、医療従事者を応援に出せないとか、ワクチン接種は住民票のある市町村(もしくは広域圏)でしかできないといった問題も、官僚の頭が硬いとか、組織が硬直しているといった問題以前に、それが日本の法制度だからです。

つまり、「健康危機管理庁」などという「司令塔」を作るのではなく、法制度をより現実に適応させることが大切です。現場を見て問題を発見し政策に反映する、同時により多くの人命を救済するという原理原則と政策を一致させる、こうした姿勢に基づく不断の努力が何としても必要です。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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