コラム

ますます高まる共和党大会「トランプ降ろし」の可能性

2016年03月15日(火)15時45分

7月の共和党大会で「トランプ降ろし」が現実となる可能性が(写真は前回2012年の党大会) Mike Segar-REUTERS

 共和党内でいま議論されているのは、トランプ候補のトップ独走を阻止する見通しが立たない中で、7月にオハイオ州クリーブランドで開かれる共和党大会の場で、トランプの獲得代議員数が「過半数に満たない」状況になったら、どうなるかということです。

 まず原則はどうなっているかというと、基本的には、各州から送られてきた代議員というのは、各州の予備選・党員集会の結果を代表しているだけに過ぎません。州によって「州憲法」に規定されていたり、あるいは「州の公選法」、あるいは「州共和党の内規」に規定されていたり、その「縛りの根拠」はマチマチですが、とにかく代議員は勝手な投票はできません。この点に関しては、大統領選の本選の選挙人団(エレクトラル・カレッジ)に似ています。

 ところが、一回目の投票を終わって「過半数」が誰も出ないとなると、状況は激変します。多くの州では、この時点で代議員は「出身州の予備選結果」という縛りから「解放される」のです。

【参考記事】トランプ勝利で深まる、共和党「崩壊の危機」

 問題は、その「縛り」の規定です。実際に「縛りからの解放」というのは、どんな段階を踏んでいくのかについては、50州の規定を調べないと分からず、大変に複雑です。ですが、ここ数週間、様々な解説が出回っています。例えば、ニューヨーク・タイムズの記事などによれば、7月の党大会における「投票」については、規定に3段階があるということになっています。

 まず第1回目の投票ですが、総数2473の代議員が投票するにあたって、基本的には各州の予備選・党員集会の「縛り」が適用されます。3月15日から始まる勝者総取り州での予備選では全員が勝者に、そして比例配分される州では得票に応じてその数は決定されており、変更はできません。ただし、全体の5%だけは「勝手に投票していい代議員(民主党のスーパー代議員のようなもの)」が存在します。

 この第1回投票で「過半数の勝者」が出ない場合は第2回投票になるのですが、いきなり完全に「自由な談合」になるわけではありません。例えば、勝者総取り州の中のカリフォルニアなどの場合は、「代議員を誰にするかを勝者が指名できる」だけでなく、「第2回投票においても自由投票を許さない」という規定になっていて、依然として州の予備選結果の拘束を受けるのだそうです。従って、この第2回投票においては、総数の43%は自由投票はできず、自由に投票できるのは57%だけになります。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、米国の台湾への武器売却を批判 「戦争の脅威加

ビジネス

11月ショッピングセンター売上高は前年比6.2%増

ビジネス

中国の海外ブランド携帯電話出荷台数、11月は128

ワールド

日経平均は小反発、クリスマスで薄商い 売買代金は今
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story