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シリア情勢に影を落とすロシアとトルコの歴史的確執
ですが、どちらかといえばイスラム的な保守勢力に支えられているトルコのエルドアン政権としては、「欧米の圧力に屈して自制する」という姿勢を見せれば、政治的には大きな失点になりますから、依然として楽観はできないと思います。結果として、NATOの中でトルコが孤立を深めてしまえば、まさにプーチンとしては「大成果」ということになります。
今後は事態の推移を見守るしかないのですが、一つ明らかとなったのは、「対ISIL作戦」の「順序」として、「まず米仏ロが連携してISILを叩くのが先」という考え方は、難しいのではないかということです。仮に作戦が成功して「ISILという共通の問題が消滅した」場合には、改めて「アサド=ロシア」対「トルコ=NATO」の確執が危険なまでに顕在化する可能性があるからです。
これを避けるためには、まず「アサド後継」をハッキリ決め、ロシアとトルコの介入をやめさせ、シリアの内戦終結の方向性を明らかにする、こちらが先決でしょう。そこを棚上げにしてISILだけ叩けばいいというのでは、地域の安定は逆に遠のく危険があります。