コラム

保守派からも見放された「ブッシュ・ファミリー」の憂鬱

2015年11月10日(火)16時10分

 もっともブッシュ(父)の支持者からすれば、2006年の中間選挙で世論から最終的に「イラク戦争へのノー」が突きつけられた際、ブッシュ(父)とベイカー元国務長官の人脈に連なるロバート・ゲーツ国防長官が登板してラムズフェルド路線を否定したのは既に歴史的事実であるし、そのブッシュ(父)がチェイニー=ラムズフェルド路線を批判するのは自然という受け止め方が可能でしょう。

 そして、ご本人のブッシュ(父)とすれば、1991年の第一次湾岸戦争の当時、シュワルツコフ司令官、コリン・パウエル統合参謀本部議長の助言により、バグダット侵攻を行わずにサダム・フセイン政権の継続を黙認した判断を、自身の人生の総決算期となる現在、やはり正当な判断だったとしたいというのは理解出来るわけです。

 そうだとしても、結果的にこの「父の評伝」によって、ブッシュ家のイメージはあらためて分裂してしまいました。もっとも、ジョージ(兄)自身はイラク戦争については反省姿勢を見せているので、一家で別に不一致があるわけではありません。ですが、それでも保守層には「ブッシュ(父)のチェイニー、ラムズフェルド批判」というのは腹の立つエピソードなのです。

 この「父の評伝」は、ジェブにさらにマイナスの一撃を与えつつあります。ブッシュ一家の憂鬱は深まるばかりです。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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