米先住民虐殺を描く『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』でスコセッシ監督が見つめた「曖昧な端数」
ILLUSTRATION BY NATSUCO MOON FOR NEWSWEEK JAPAN
<僕が映画化した「福田村事件」とほぼ同時期にアメリカで起きたオセージ虐殺事件がテーマだが、監督は単純な「白人対先住民」の対立に興味は示さない>
2023年夏、撮影と編集が終わった『福田村事件』の公開前の宣伝の時期、取材に来てくれた各媒体の記者やライターから、「『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』は観ましたか?」と何度か質問された。
この映画のタイトルを僕は知らなかった。自分の映画の編集でそれどころじゃなかったのだ。
「誰の映画ですか?」
「(ロバート・)デ・ニーロの新作です。福田村事件とほぼ同時期にアメリカで起きたネイティブアメリカンへの虐殺をテーマにしています。偶然なのかとびっくりしました」
『福田村事件』の公開は23年9月1日。『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』の日本公開は23年10月20日。実際に福田村で被差別部落出身の行商団9人が殺害されたのは1923年。そしてアメリカのオクラホマ州で(少なく見積もっても)60人以上のネイティブアメリカンが殺されたのは1921~25年。
確かにいろいろ符合している。でも製作費は控えめに書いても2桁くらい違う。
まあ仕方ない。これは今の日本映画の現状でもあるし、そもそも大手映画会社から全て協力を断られた『福田村事件』は、規模は大きいように見えるが、実態は自主制作映画なのだ。
でも事件と映画が公開された時期が極めて近いこと、多数派によるマイノリティーへの虐殺をテーマにしたこと、日米どちらの国でも史実としてほとんど語られてこなかったことなどは、確かに共通している。
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