ボブ・ディランの伝記映画『名もなき者』にがっかり......彼のミューズをなぜ軽視?
ILLUSTRATION BY NATSUCO MOON FOR NEWSWEEK JAPAN
<ディランの恋人だったスーズ・ロトロは、彼に多大な影響とインスピレーションを与えたが......>
ボブ・ディランの本名はロバート・アレン・ジマーマン。ボブがロバートの愛称であることは分かる。ならばディランの由来は何か。
一般的には詩人で作家のディラン・トマスにあやかったとされているが、ディラン自身は何度も否定している(しかしディランのややこしさは、本人が否定しているからといってそれを信用できないことにある)。
そのディランのデビュー前後の数年を描いた『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』は、僕の周囲では評判が良い。でも僕は駄目だ。
駄目な要因はいくつかあるが、最大の要因は彼の2枚目のアルバム『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』のジャケット写真でディランに寄り添う恋人のスーズ・ロトロの描きかただ。
人種差別撤廃などさまざまな社会運動に従事していたロトロに、ディランは大きな影響を受けた。抽象的で暗喩にあふれた詩についても、ロトロが傾倒していたランボー(ディラン・トマスではない)やブレヒトの戯曲、シュールレアリスムなどにインスピレーションを受けたと、ディラン自身も語っている。
デビューアルバム『ボブ・ディラン』のオリジナル曲は2曲だけだが(後は伝統的なフォークソング)、『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』には大ヒットした「風に吹かれて」だけではなく、軍需産業を批判する「戦争の親玉」やキューバ危機がテーマの「はげしい雨が降る」、人種差別撤廃を歌う「オックスフォード・タウン」などオリジナルのプロテストソングが多数収録され、ディランは一気にメジャーになった。






