コラム

「中華文春砲」郭文貴と、29年成果なしの民主化運動家の違い

2018年06月02日(土)14時25分

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1989年6月4日の天安門事件 REUTERS

湖南省の同郷会が東京に6団体もある理由

前述したとおり、金に汚い浅ましい人間が多すぎる。金儲けしたい、いい暮らしをしたい、有名になりたいという輩ばかりだから、互いに協力することができない。

世界各地に中国民主化団体が存在するが、その数は数え切れないほど多い。すぐに分裂してしまうからだ。

民主化団体だけではない。中国には同郷会という組織がある。日本風に言うならば県人会、同郷人の組織だ。私の出身地である湖南省の同郷会は東京になんと6団体も存在する。会長の肩書きが欲しい、お山の大将ばかりだからだ。会長になれば、名誉欲も満たされるし、中国に戻ったときにビジネスの役にたつかもしれないというソロバン勘定も働く。

東京にある同郷会は出身者たちを繋ぎ、慣れない海外生活で困っている人を手助けすることが本来の役割のはずだ。だがこんなに分裂していては何の力もない。活動といえば、食事をしたり、スキー旅行に出かけたりというお遊びばかりだ。

こんなくだらない活動をしているぐらいならば、街で黙々とゴミ拾いでもしていたほうが、よっぽど世のため人のためになるではないか。

浅ましい根性を変えないかぎり、中国に変化はない。今、40歳以上の人間は古い考えのままで変わることはないだろう。残念ながら、天安門事件当時の大学生たちは古い考えの持ち主で、中国を変える力がなかった。

期待が持てるとすれば、改革開放以後に生まれた新しい中国人だ。欧米や日本の情報にも詳しく、実際に海外に行った経験も豊富だ。新しい中国人が世の中の主流となるとき、中国は大きく変化する。そう期待している。

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プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

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