コラム

中国政府系グループによる「史上最大の富の移転」...トランプ次期政権の対抗策は?

2024年12月24日(火)17時15分
激化するアメリカと中国のサイバー戦争

Khanthachai C/Shutterstock

<大規模な産業知的財産(IP)の窃取を繰り返す中国からのサイバー攻撃。「トランプ2.0」時代には、サイバー空間でも米中の戦いが激化するのは必至だろう>

2025年1月20日、ドナルド・トランプ前大統領が、第47代の大統領に就任する。「トランプ2.0」が発足するわけだが、本稿では、私たちがトランプ次期政権から何を期待でき、そしてサイバー領域にどんな影響を及ぼすのか見ていきたい。

まずひとつはっきりしていることは、中国が焦点になるということだろう。すでにアメリカの政治家たちの間でもサイバーセキュリティは超党派で重要視されており、中国政府に対する懐疑論につながっているが、トランプ氏が大統領選でも中国との貿易戦争を加速させると主張してきたことで、アメリカ人はサイバースパイ活動が激化することを覚悟しておくべきだ。

中国のハッカーは最近、世界各地で通信分野を標的にしてスパイ活動を実施している。中国は紛争が起きた時に備えて、重要なインフラに対する攻撃を繰り広げているのだ。台湾やフィリピンの海域をめぐる紛争が勃発した場合に備えて、中国が米国の重要インフラを麻痺させる態勢を整えようとしているのではないかと懸念している専門家も少なくない。この動きは当社の調査でも把握している。

中国政府が支援している可能性のある政府系アクターとしては、例えば「Volt Typhoon」がいる。このグループは少なくとも過去2年にわたってキャンペーンを行っており、特に通信業界や情報技術業界、製造業などさまざまな分野の複数の分野への攻撃を行っている。

プロフィール

クマル・リテシュ

Kumar Ritesh イギリスのMI6(秘密情報部)で、サイバーインテリジェンスと対テロ部門の責任者として、サイバー戦の最前線で勤務。IBM研究所やコンサル会社PwCを経て、世界最大の鉱業会社BHPのサイバーセキュリティ最高責任者(CISO)を歴任。現在は、シンガポールに拠点を置くサイバーセキュリティ会社CYFIRMA(サイファーマ)の創設者兼CEOで、日本(東京都千代田区)、APAC(アジア太平洋)、EMEA(欧州・中東・アフリカ)、アメリカでビジネスを展開している。公共部門と民間部門の両方で深いサイバーセキュリティの専門知識をもち、日本のサイバーセキュリティ環境の強化を目標のひとつに掲げている。
twitter.com/riteshcyber

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