コラム

ウクライナ和平交渉で「無視」され、ロシアの脅威に怯え始めた欧州...軽武装・経済優先の重いツケ

2025年02月26日(水)17時48分

トランプ氏との「ブロマンス」復活は見果てぬ夢

「欧州にとって本当に真夜中まであと5分という状況だ。最も懸念しているのはトランプ氏が欧州やウクライナの意向を無視してロシアと取引しようとしていることだ。ウクライナにとっても欧州にとっても受け入れられない」とメルツ氏は危機感を募らせる。

戦後日本の吉田ドクトリンと同じ軽武装・経済優先のドイツは昨年ようやくGDP比の2%を国防費に充てる北大西洋条約機構(NATO)の目標を達成したが、トランプ氏が求める5%には程遠い。ドイツは国防を強化する1000億ユーロ基金に2000億ユーロを積み増すと報じられた。

昨年12月、トランプ氏をパリのノートルダム大聖堂再開記念式典に招待し、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領を交えて3者会談を行ったエマニュエル・マクロン仏大統領は第1次トランプ政権当初の「ブロマンス(男性同士の近しい関係)」復活を目指す。

ロシアの全面侵攻3年に際し、トランプ政権は国連での採決で2度にわたりロシア側に立ち、ウクライナ戦争に対する米国の変化を浮き彫りにした。マクロン氏はホワイトハウスでトランプ氏と何度も固い握手を交わしたが、欧州と米国間の溝を埋めることはできなかった。

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プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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