コラム

「プリゴジンの反乱」を抑えられなかったプーチン...国民に「弱くて無能」な姿が露見した指導者に迫るメルトダウン

2023年06月27日(火)17時29分
ワグネル創設者エフゲニー・プリゴジン

ワグネルが制圧したロシア軍の南部軍管区司令部から去るプリゴジン(6月24日) Alexander Ermochenko-Reuters

<ノンエリートの怒りを煽って人気を集めるプリゴジンはプーチンにとって厄介な存在に。プリゴジンは、進軍するワグネルを「市民は歓迎した」と強調>

「プーチンの料理番」ことエフゲニー・プリゴジン率いるロシア民間軍事会社ワグネルグループの部隊がモスクワの200キロメートル圏内に迫ったものの踵を返し、「プリゴジンの反乱」は24時間も経たないうちに幕を閉じた。情報機関、治安組織、軍、オリガルヒ(新興財閥)を対立させ分断統治するウラジーミル・プーチン露大統領のシステムは瓦解し始めた。

ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領の仲介で免責され、同国に逃れたとされるプリゴジンはしばしの沈黙の後、テレグラムで26日「世界で最も経験豊富で戦闘態勢の整ったワグネルは7月1日に消滅する予定だった。露国防省と契約を結べば戦闘能力が失われることを知っていたため、契約を結ぶ者は誰もいなかった」と反乱の理由を語った。

「われわれへのミサイル、ヘリコプターの攻撃があり、ワグネルの戦闘員が殺傷された。攻撃されれば、われわれを破壊しようとする試みと受け止め、全軍で対応する。それは24時間続いた。部隊の一方はロストフに向かい、もう一方はモスクワに向かった。一日で780キロを走破した。沿道の軍事施設はすべて封鎖され、武装解除された」(プリゴジン)

「戦闘員は誰1人として強制参加させられたのではない。目的はワグネルの破壊を防ぎ、膨大な過ちを犯した者たちを裁くことだ。これは国民からの要求だった。進軍中に見かけた軍人は皆、私たちを支持してくれた。『正義の進軍』を止めたのはロシアの血を流したくないからだ。目的は抗議の意思を示すことで国家を転覆させるためではなかった」と弁解した。

「ロシアの都市を通り過ぎた時、市民は大歓迎した」

ルカシェンコはプリゴジンに手を差し伸べ、ワグネルが合法的に活動できる解決策を見つけることを申し出たという。「昨年2月に特別軍事作戦が開始された時点でロシア軍の訓練、士気、組織レベルがワグネルと同じであれば作戦は1日で終わっただろう。だからこそわれわれがロシアの都市を通り過ぎた時、市民は旗を掲げ、歓迎した」とプリゴジンは強調した。

「市民の多くは今も応援の言葉を寄せてくれる。ワグネルが生き残るための闘いとは別に、官僚主義や今日存在するその他の悪との闘いを支援してくれた」。反乱の背景には「正規軍」セルゲイ・ショイグ国防相、ワレリー・ゲラシモフ軍参謀総長と「非正規軍」プリゴジンの熾烈な権力闘争がある。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

フーシ派、紅海で米駆逐艦など攻撃 パレスチナとの連

ワールド

ロシアの首都モスクワ郊外でドローン撃墜、破片が民家

ワールド

米テキサス州など4州で21人死亡、竜巻伴う雷雨 一

ワールド

プーチン氏がウズベキスタン訪問、中央アジア初の原発
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 2

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 5

    カミラ王妃が「メーガン妃の結婚」について語ったこ…

  • 6

    汎用AIが特化型モデルを不要に=サム・アルトマン氏…

  • 7

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 8

    台湾を威嚇する中国になぜかべったり、国民党は共産…

  • 9

    トランプ&米共和党、「捕まえて殺す」流儀への謎の執…

  • 10

    胸も脚も、こんなに出して大丈夫? サウジアラビアの…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像を…

  • 5

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 6

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 7

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 8

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 9

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 10

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story