コラム

「COP26はグリーンウォッシュの祭典」子供たちを脱資本主義に誘うグレタさん

2021年11月06日(土)12時17分
デモ参加者

「授業より地球が大事」と多くが学校を休んでデモに参加した子供たち(筆者撮影)

グレタ・トゥーンベリは、COPにも資本主義にも背を向け過激さを増して帰ってきた

[英北部スコットランド・グラスゴー発]スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥンベリさん(18)が4日、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の開催地グラスゴーで行われた「未来のための金曜日」行進に参加し、「COPはPRイベントだ。COP26はグリーンウォッシュの祭典だ」と痛烈に批判した。

kimura20211106112702.jpg(筆者撮影)

グリーンウォッシュとは環境を意味する「グリーン(緑)」と「ホワイトウォッシュ(ごまかし)」を組み合わせた造語で、政府や企業が環境対策に取り組んでいるように見せかけているだけで実際にはそうではないことを指す。行進のあとジョージ広場で開かれた集会でグレタさんはこう訴えた。

「COP26が失敗なのは秘密でもなんでもない。今の状況を作り出した同じ方法で危機を解決できないのは明らかだ。この事実を理解し始める人が次第に増えている。何が権力者たちを目覚めさせるのかを多くの人々が自問している。でも彼らはすでに気付いている。権力者は自分たちが何をしているのかを明確に知っているのだ」

「COPはもはや気候変動対策会議ではない。いまや北半球のグリーンウォッシュの祭典だ。2週間続けられるいつも通りのBlah Blah Blah(くだらない、くだらない、くだらない)の祝福。最も影響を受ける地域の最も影響を受ける人々の声は聞かれない。未来世代の声はグリーンウォッシュと空虚な言葉と約束の中に溺れている」

「植民地主義以降にさかのぼる他の危機や不正と直接結びついている」

グレタさんは怒りの表情を浮かべながら続けた。「しかし事実は嘘をつかない。私たちは王様が裸であることを知っている。パリ協定の目標を達成するには人間のコントロールを超えて不可逆的チェーンリアクションが始まるリスクを最小限に抑えなければならない。そのためには世界がまだ見たことがないような抜本的な温室効果ガス排出量の削減がすぐに必要だ」

「私たちは一つの手段でそれに近づける技術的な解決策を持ち合わせていない。私たちは社会を根本的に変革する必要がある。これは指導者がこの危機について繰り返し言及するのに失敗してきた不愉快な結果だ。気候や生態系の危機は真空の中で存在しているのではなく、他の危機と直接、結び付いている」

kimura20211106112703.jpg(筆者撮影)

「気候と生態系の危機はもちろん無関係に存在しているわけではない。植民地主義以降に逆上る他の危機や不正と直接結びついている。ある人は他の人よりも価値があり、それゆえに他の人を盗み、他の人を搾取し、盗む権利があるという考え方に基づく危機だ。根本的な原因を解決せずに、この危機を解決できると考えるのは甘すぎる」

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

インド・EUのFTA交渉、鉄鋼・車・炭素税でさらな

ビジネス

日産社長「国内事業を再始動」、新型エルグランドとパ

ワールド

豪の難民ナウル移送、秘密裏の実施を懸念=人権委

ビジネス

消費者態度指数、10月は3カ月連続上昇し35.8 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」にSNS震撼、誰もが恐れる「その正体」とは?
  • 2
    コレがなければ「進次郎が首相」?...高市早苗を総理に押し上げた「2つの要因」、流れを変えたカーク「参政党演説」
  • 3
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大ショック...ネットでは「ラッキーでは?」の声
  • 4
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 5
    「ランナーズハイ」から覚めたイスラエルが直面する…
  • 6
    楽器演奏が「脳の健康」を保つ...高齢期の記憶力維持…
  • 7
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 8
    リチウムイオンバッテリー火災で国家クラウドが炎上─…
  • 9
    「何これ?...」家の天井から生えてきた「奇妙な塊」…
  • 10
    怒れるトランプが息の根を止めようとしている、プー…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 10
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story